人ならざる者
「えっ?!まだいるってこと?!」
次の日、勇太は休み時間に貴司の席の隣に聞きに行った。
「大林君も知らない…オリーブのことはみんな知ってるから違う…そもそも夢だったのか…」
「野上さんには聞いたの?」
「まだなんだ。先に大林君に聞こうと思ってさ。」
「夢じゃない気がする…中島君と晴明の関係だったら…」
「あっ、先生入ってきた。ありがとう、大林君!」
勇太はそう言って自分が座っていた海斗の隣の席に戻った。
昼休みに海斗に聞いても海斗も知らないとのことだった。
『ただの夢か…俺の考えすぎなのか…』
勇太は講義中も考えていた。
全ての講義が終わる前に携帯にモリオンからメールが来た。
『放課後、勉強してから蒼い石に来い。』
勇太以外の海斗、貴司、あき、樹理奈にも一斉送信されていた。
『大林君がモリオンに聞いてくれたのか…教えてくれるんだろか。』
勇太はそう思いながら海斗と研究室に向かった。
モリオンは研究室にいなかったが、少し気が楽になり勉強に集中できた。
研究室メンバーで7時に『Bar 蒼い石』に向かう約束を講義室に出る前にした。
『Bar 蒼い石』の前には勇太と海斗が着く前にすでに貴司、あき、樹理奈が待っていた。
「モリオンからのメール、何で呼び出されたのか分からなかったけど、大林君から話聞いたわ。」
あきが勇太に言った。
「野上さんも知らないって。」
貴司が言った。
「モリオンがわざわざ呼び出してきたってことはいるんだろな。」
海斗が言った。
「その可能性高いと思う。」
あきが言った。
「じゃあ入ろう。」
貴司はBarのドアを開けた。
「いらっしゃい…あら。久しぶりね。モリオンが奥の部屋で待ってるわ。」
ラピスラズリが笑顔で5人を出迎えた。
『もう立ち直ったのかな…』
勇太はその笑顔を見て安心した。戦いの後、サファイアを失ったラピスラズリの悲しそうな表情を見てしまったので気にはなっていた。
5人が奥の部屋に入るとモリオンが座って水を飲んでいた。
「来たか。ソフトドリンクでいいか?」
モリオンはメニューを差し出して言った。
5人はドリンクを注文し、ドリンクが来るのを待っていた。
「さて、お前はまたとんでもない“夢”をみたな。」
モリオンは勇太を見て言った。
「まぁいい。『人ならざる者』、お前たちが知っているのはジルコンのジルコニア、ペリドットのオリーブだろ?」
みな、頷いた。
「知っての通りどちらも式神だ。そして、ルビー、サファイア、エメラルドもそうだった。彼らは属性に特化した式神、つまり火、水、木以外の属性に特化した式神は他に誰がいるか。考えたことはあるか?」
モリオンの言葉にみな黙ったまま考えていた。
「土、金属、光、闇…ってことだよね?」
貴司が聞いた。
「土だ。」
モリオンが言った。
「オパール?!…違う、確か実家は半田屋って…」
樹理奈が言った。
「…トパーズ。」
海斗が呟いた。
「そうだ。」
モリオンは頷いた。
「トパーズって…」
勇太はトパーズを見たことがないわけではないが思い出せずにいた。
「twelvesの1人だから扉を開けた時にいたはずだ。」
モリオンが言った。
「私、あんまり覚えてないかな…」
樹理奈が言った。
勇太も同じだった。
「俺だけか、師匠をしてもらったことがあるのは。」
海斗が言った。
「マジメな人だった。ただ、機械的というか、淡々としてたな。今から思うとそれって式神だからなのか…」
「オパールに紹介されたんだな。トパーズを創ったのはダイヤとタイガーアイだ。タイガーアイは自分にもしものことがあった時のために土属性に特化した式神を創ったそうだ。ただ、トパーズはあまり姿を現さない。Elementsを守るためだと聞いている。」
「まだいるわよ。トパーズ以外にも。」
ドリンクを運んできたラピスラズリが言った。




