晴明のけじめ
「式神だったなんて…全然…そんな風には…」
貴司が言った。
サファイアの弟子だったあきもうなずいた。
「千年前からいたからな。」
サファイアが言った。
「知ってる人は知ってるのよ。魔術界創設直後の弟子たちぐらいまでだけどね。」
エメラルドが言った。
「じゃあね、みんな。」
ルビーがニッコリ手を振った。そして、ルビー、サファイア、エメラルドは姿を消した。
「さて、封印といこうか。」
晴明が言った。クォーツとアメジストは突然の教授との別れにショックでうなだれていた。
晴明は勇太の前に歩いてきた。そして、勇太にペンダントにしていた金の五芒星を渡した。
「これを持って5人で『光と闇の空間』と呼ばれる場所に行くのだ。」
「えっ?」
「その五芒星を鍵として、『扉の間』を封印するのだ。主たち5人で。」
「ちょっ…ちょっと待って下さい!」
晴明の言葉にクォーツが我に返って口を挟んできた。
「それは俺がします!弟子として最後に…」
「駄目だ。主には仲間が4人いる。5人いるから意味があるのだ。」
晴明がクォーツの要望をあっさり却下した。
「5人で封印術を使うってこと?」
勇太が聞いた。
「全ての属性で持って封印するのだ。」
「それなら俺たちができます!魔術に関しては俺たちの方が上です!何故、勇太たちにさせるのですか?」
クォーツが晴明に詰め寄った。
「先ほども申した通り、5人いるからだ。」
晴明が言った。
「清太よ、主たちを連れて行っておくれ。わしも大也のもとへ行かねば。」
「それってまさか、晴明も?!」
勇太は驚いた。
「左様。わしも大也と一緒に封印されるのだ。そして、大也をあの世に導いてやるのだ。」
晴明はニヤリとした。
「晴明様…あなた様もなのですね…私のせいですか…?ならば私も…」
ジルコンはよろよろと立ち上がって言った。
「左様。弟子の失態の責任をとるため、と申したいが、大也に約束を守らせるのだ。いずれ人は死にゆく者。風子よ、そなたは清太たちと残るのだ。魔術界を引っ掻きまわした責任をとることだな。」
「晴明様…申し訳ありませんでした…」
ジルコンは大粒の涙を流した。
「ようやく来たか。」
晴明が勇太の後ろに目線を向けた。
勇太が振り返ると半透明のペリドットが立っていた。
「あなたとお別れなのだな。」
ペリドットが言った。
「主たちには話したぞ。」
「晴明殿には感謝している。あなたのお陰で俺はこの状態でこの世におれるのだから。」
「クォーツ、黒いのろしみたいのが上がってる!って…まさか…ペリドット?!」
ターコイズが現れた。続いてオパールも現れた。
「ターコイズ、オパール…」
ペリドットの顔はうれしさと懐かしさ、申し訳なさが入り交じった複雑な顔になった。
「…バカヤロウ!何で顔を見せに来なかったんだ!あの日、宝石核が半分に割れているのを見た時から完全には死んでないと思ってたんだ!そしたら、メタモルが持ってたって言うじゃねーか!しかも、お前は式神として存在してるって!」
オパールはペリドットに詰め寄った。
「…すまなかった。」
ペリドットはオパールに頭を下げた。
「そっ、それは後だ。黒いのろしが上がってるんだ。」
ターコイズが気を取り直して言った。
「どこからだ?」
「恐らく、『光と闇の空間』だろ。」
クォーツの問いにターコイズの代わりにオパールが言った。
晴明がニヤリとした。