ジルコニウムの秘密
魔術界も暗く、どんよりとした空気が漂っていた。
「メタモルフォシス様。」
5人の前にオリーブが表れた。
「オリーブ。あっ、ペリドットの式神なんだ。魔術界はどうなってるの?」
勇太が聞いた。
「ジルコニウムが攻めてきました。しかし、とても異様で。」
「分かった。で、どこにいるの?」
「あちらの天守閣に。恐らく、ダイヤ様と直接対決するものかと。」
「あき、オリーブとここに残るんだ。」
勇太があきに言ったが、あきは首を横に振った。
「私も行きましょう。ブルーサンドストーン様を必ずお守り致します。」
「ありがとう、オリーブ。」
6人は天守閣の中に入り、奥へと進んで行った。
「寒い…」
奥へ進めば進むほど冷気が強くなっていくのを感じた。
「これは敵のボスの闇の力の一部です。」
オリーブが言った。
「ジルコニウムとモンドも一緒ってこと?」
海斗が聞いた。
「分かりません。私が見たのはジルコニウム1人だけだったので。」
冷気だけでなく、少しでも気を緩めると気持ちが落ち込むような感覚に襲われた。
「皆さま、心を強く持って下さい。闇に飲まれないように。」
オリーブが言った。
「目を覚ませ。お前はモンドに唆されているだけだ。」
クォーツの声が聞こえた。
みな声のする方へ走っていくと、クォーツとアメジストの前に黒い装束を着たジルコニウムが立っていた。
「唆してなどいない。この女を救ってやったのだ。」
ジルコニウムの声は男の声も混じったおかしな声になっていた。
「クォーツ。」
勇太はクォーツを呼んだ。
「お前…何故ここに来た?」
クォーツは振り返ってあきがいるのを見て言った。
「人間界が…時間が止まってしまってるみたいなんだ。だから…」
貴司が言った。ジルコニウムは勇太たちを見てニヤリとした。
「プラチニウムが自ら出向いてくれるとは!ダイヤもその娘もビビって出てこれないでいるのに!」
ジルコニウムは不気味な声色のまま歓喜の声を上げた。
勇太はあきを庇った。
クォーツはアメジストに目配せをした。
「それ以外の者は我糧となるが良い。」
ジルコニウム背後から黒いもやが吹き出し、勢いよく勇太たちに向かってきた。
「仕方ないわね!」
アメジストが勇太たちの前に立ち、黒い大きな魔法陣の盾でもやを吸収した。
「私も久しぶりだからね…キツいわ…」
アメジストは汗をかいていた。
「闇属性の盾…術式がとても複雑だ…」
貴司はアメジストの盾を見て感心して言った。
「呑気に感心してんじゃないわよ…」
「あれだけ慣らしておけと言っただろ。」
クォーツがアメジストに言った。
「少しはしたわよ!」
アメジストが負けじと言った。
「ジルコニウム…いや、ジルコンか。お前は何故…」
クォーツがジルコニウムに言った。
「うぅー…」
ジルコニウムが女の声で唸った。
「お前たちには分からないだろう。この女の苦しみを!大丈夫だ。俺がお前の心を救ってやる。」
今度はジルコニウムの声は男になった。
「何?!」
樹理奈は驚いて言った。
「恐らく、ジルコンにモンドがとりついている。」
クォーツが説明した。
「いつからだ?いつからお前はジルコンとジルコニウムという1人2役を演じてた?」
クォーツが聞いた。
「バカだな。100年も前からだ!」
男の甲高い声が言った。
「この女は妹を殺した!そして妹の魔力核を奪ったのだ!はじめはスパイとして俺の前に現れたが俺の目は誤魔化せなかった。妹を殺してしまった後ろめたさ、後悔の念をヒシヒシと感じていたからな!だから俺は諭してやったのだ!そしてこの女は俺の手足となり魔術界で暗躍してくれていたのだ!」
男の声にクォーツとアメジストは絶句していた。