初級魔術師(オーレ)
勇太たちが研究室から帰宅する時、屋上にはアメジストとクォーツがいた。
「あら、もう帰っていくわ。」
校舎から出ていく勇太たちを眺めながらアメジストが言った。
「あぁ。」
クォーツがちらっと見て返事した。
「全員初級魔術師になったって。1カ月かからなかったわね。案外、今回はアタリかも。」
「それはまだ分からんが、ルビーから聞いたか?」
「うん。いるんでしょ?」
アメジストは下を見下ろしていった。
「あきはすでに感づいていたようだ。お前も変な格好ばかりせず気を引きしめろ。」
アメジストがムカッとして、
「現代風って言ってよね。ずっと儀式用装束ばかり着てるくせに。」
と詰め寄ろうとしたときサファイアも現れた。
「ダイヤが呼んでる。」
アメジストが腕を組ながら、
「はぁ、いよいよか。」
と言って3人は姿を消した。
勇太たち5人が校舎から出て歩いていると突然あきが立ち止まって、校舎の上の方を睨んでいた。
「どうした?」
海斗があきに聞いた。
あきは勇太たちの方に視線を戻して、
「なんでもない。」
と言って歩き出した。
勇太は何となく嫌な予感がしたが、5人はそのまま帰路についた。
次の日から術式と術式をの発動の仕方の修行に入った。
「まずは頭の中でイメージしながら魔力で文字を書く。例えば物を浮かせるならふわふわ浮かんでるのをイメージしながら“浮”と指をペンの様にして魔力で書く。そして文字に魔力を込めて発動、すると浮き上がる。」
ペリドットが自分の鉄アレイを浮かせて見本を見せてくれたが、指から魔力をミミズのように出すので精いっぱいだった。
「まぁ、1番苦労するところだからな。気長にいこうぜ。」
グッタリして座りこんでいる勇太にペリドットは励ました。
その後、毎日同じことを繰り返してやっと文字を書けるようになった。
「よし、魔力を込めてみろ。」
ペリドットに言われて鉄アレイの側に書いた“浮”の文字に魔力を込めたが微動だにしなかった。
「…ダメか。」
勇太は座りこんでしまった。
「毎日続けてみろ。この鉄アレイが鳥の羽根のようにふわふわ浮かぶぜ。」
ペリドットは勇太にチョコレートを渡しながら言った。
勇太はチョコレートを頬張りながらふと思い出した。
「ペリドットは本当は何歳なの?」
勇太が聞いた。
ペリドットは少し考えて、
「覚えてたか。よし、浮かせれるようになったら教えてやる。」
と意地悪っぽく笑って答えた。