忍び寄る闇
「ペリドット、ガーネットが言ったことって…」
勇太が言った。
「あぁ、何か得体の知れないものが動き出しているのは俺にも感じている。オリーブに探ってもらっているが、出所が掴めないんだ。ジルコニウムもだ。」
「敵は何か画策してるのか…」
海斗があきをチラッと見て言った。
「だからこそ、フラーレンは人間界に出てこないんだろう。ダイヤが止めているのかもな。そして、あきにも金剛の血が流れているとなってあきも魔術界で匿わなくてはいけないはずが、それもできていない。ダイヤもだんだん余裕がなくなっているのかそれとも…」
「私を囮にしてモンドを誘き寄せようとしているのかも。」
ペリドットが言いかけたとき、あきが口を開いた。
みな黙ってしまった。
「でも、もう魔術界で軟禁されるのはイヤよ。」
あきはニッコリ笑った。
「みんな一緒ならあきちゃんを守れるわ!私だってペリドットに修行つけてもらって少しは強くなったわ!」
樹理奈があきの手を握った。
みな頷いた。
『俺も…今度こそあきを守るんだ…闘いを終わらせたい…じゃなきゃずっとあきは敵の脅威にさらされ続ける。』
勇太はペリドットを見た。ペリドットは勇太を見て大きく頷いた。
「5人で一緒か…5人揃えば全ての属性が揃う。」
海斗が言った。
「そうか!火は松下君、水は松下君と野上さん、木は原田さん、土は松下君、無は僕と中島君と…みんなか、光は中島君に、闇と金属は野上さんだ!」
貴司が興奮気味に言った。
「結構、海斗がカバーしてくれてるな。」
勇太が言った。
「広く浅くってヤツだ。」
海斗は笑って言った。
「その笑顔だ。」
ペリドットが言った。
「魔力よりも術の強さよりも大事なのは正の感情、心を強く持つことだ。仲間がいるってのはお前たちの強みだ。」
ペリドットの言葉にみな頷いた。
5人が講義室に戻ってみると異変が起きていた。
他の学生たちがマネキンのように動かないでじっとしていた。
「時計も止まってる…」
勇太が講義室の時計を指差して言った。
「時間が止まってるってことよね?」
樹理奈が周りを見て言った。
話をしている最中だった者、立ち上がって講義室を出ようとしている者、5人以外のみながその場に固まってしまっていた。
「外に行ってみようか。」
貴司が言い、5人は講義室を出ようとした。
「彬のヤツ、何話してたんだ?」
ニヤケ顔で晋也と賢二に向かって口を開いて動かない彬を見て海斗が言った。
「最近、彼女ができたって言ってたからな。」
勇太が言った。
彬の顔を見ていると、早くこの状況から打開しなければという思いになってきた。
他の講義室も校舎の外も勇太たち以外誰も動いている者はいなかった。
「時間を操れるのって、金剛先生と晴明だけよね?」
樹理奈が言った。
「全ての属性を極めた者…他にいるとしたら?」
あきが真剣な顔で言った。
「ジルコンもしくはジルコニウムの仕業ってことか。」
海斗が言った。
勇太は校舎を見上げた。
屋上に黒い人影が見えた。
「あっ!あれ!」
勇太が指差して4人はその方向を見上げたが、人影は姿を消した。
5人はしばらくその場を動けなかった。
「魔術界に行ってみよう。」
勇太が言った。