あきの秘密 その2
「俺が鉱山に潜入した時、コッパーとニッケルの会話を偶然聞いてしまった。『プラチニウムはまだ覚醒しないのか』と。それがあき、お前のことだった。あの時のコッパーはガーネットが化けたものだとしたら、もしかしたらわざと俺に聞かせたのかもしれない。それにお前たちの時以前に扉を開いたとき、予定していた場所とは別の場所で扉を開いてしまった。つまり、あきは魔術師になる予定の者ではなかった。しかし、お前の中の金剛の血が扉を引き寄せてしまったんだ。座標がずれたのはそのせいだろう。」
ペリドットが話した。勇太たちは黙って聞いていた。
「元々は、ダイヤがいた附属高校の美術室の美術部員が修行予定だったの。でも、そう、座標がずれてあきを含む音楽室の吹奏楽部員3人が対象になってしまった。ダイヤはこの時に座標がずれた原因を突き止めておくべきだった。ホント、バカな人。」
いつの間にか、またガーネットが現れた。
「ガッ、ガーネット?!」
勇太たち以上にペリドットが驚いていた。
「あら、お久しぶりね。見事にジルコニウムの罠にはまってこんな姿になってしまって。」
ガーネットが嫌みっぽく言った。
「うっ…」
ペリドットは黙ってしまった。
「そのお陰で助かってるところもあるんだけど。」
ガーネットはチラッと勇太を見た。
「あの…ガーネットさん、モンドが金剛の血を欲しているのはダイヤ…金剛先生の術を受けにくいからですか?」
貴司が聞いた。
「モンドはダイヤから力を奪ったとはいえ、正体は怨念の塊。つまり、完全ではないから肉体を欲しているの。そのためにダイヤの体が一番なんだけど、ダイヤの血族でも十分だと思っているのよ。」
「鉱山に潜入していたのはモンドの記憶を手に入れるためってのは本当なのか?」
海斗が聞いた。
「まぁね。」
「それは何故?」
「ダイヤの命令だったのよ。」
「何か分かったのか?」
「さぁね。」
ガーネットは教えようとはしなかった。
「ガーネットさんじゃなきゃダメだったのですか?」
勇太が聞いた。
何故、ダイヤが信頼している弟子のクォーツやアメジストではなく、ガーネットを選んだのか勇太はずっと引っ掛かっていた。
ガーネットは一瞬、驚いた顔をしたが、
「そうね。フラーレンの“おばさん”じゃリスクがあるからね。」
と意味ありげに言った。
「気をつけてね。嫌な風が吹き始めているわ。モンドが動き出すわ。」
そう言うとガーネットは姿を消した。