半分正解
「やった…か…?」
勇太は砂ぼこりが舞う中、ニセモノのクォーツの姿を確認しよいと目を凝らした。
「この程度で…この私を倒せるとでも?」
砂ぼこりから声が聞こえたと同時に勇太の顔には殴られたような衝撃を受け、勇太は吹き飛ばされた。
「私の前で…あのお方を式神扱いするな…」
砂ぼこりが晴れてニセモノのクォーツが姿を見せた。
無傷だったが、声はクォーツと女の人の声が混じって2重に聞こえた。
ニセモノのクォーツの前に黒い装束を着て、半透明の黒い宝石がついたお面を被った人ー式神が立っていた。
勇太に攻撃を加えたのはこの式神だった。
『黒い…ジルコニア?やっぱりジルコニウムか…』
勇太はニセモノのクォーツの正体がジルコニウムだと思った。
「苦しみながら死んでもらう!」
ニセモノのクォーツがそう叫んだが、何かに気づきその場から飛び退いた。
「あら、残念。」
勇太の横にいつの間にかガーネットが立っていた。
勇太はガーネットを見上げた。
「大丈夫?さぁ、立って。あの状況で攻撃するなんてやるじゃない。」
ガーネットは勇太に微笑んだ。
「なぜ…結界を…」
ニセモノのクォーツはたじろいでいた。
「結界?確かにあったけどなんてことなかったわ。」
ガーネットが言った。
「それにここにいるのは私だけではないけどね。」
ガーネットが後ろを振り返ると、モリオンが姿を現した。
「クォーツに頼まれてたんだよ。『ヤツは勇太を狙いに来る』って。この学園内にいる時は俺が気づかれないように護衛してくれってな。」
モリオンが言った。
ニセモノのクォーツは悔しそうな顔をした。
「いくらあなたとはいえ、想定外だったのかしら?確かに鉱山でもなかなか尻尾をつかませてくれなくて苦労したわ。」
ガーネットが言った。
「この前はマーキュリーをけしかけて、今回もこの子の命を狙うってことはもう正体明かしてるようなものよね?」
「俺もクォーツの仮説を聞いたときは驚いた。すっかり騙されてたな。」
モリオンもニセモノのクォーツの正体が分かっているようだった。
「ジルコニウム?」
勇太がガーネットに聞いた。
「“半分”正解ね。」
ガーネットがニッコリ笑った。
「ちっ!」
ニセモノのクォーツが舌打ちした後、姿を消した。
「逃げられたわね。モリオン、お久しぶり。」
「相変わらずだな、ガーネット。」
「あっ…ありがとう。」
勇太がガーネットとモリオンにお礼を言った。
「いえ、ずっと見てたけどあなたはかなりレベルを上げたみたいね。」
ガーネットが言った。
勇太はキョトンとしていた。
「ヤツの罠に気づけたのはなかなかだ。」
モリオンも言った。
2人とも始めから見ていたようだった。
「さて、私は魔術界に戻るわ。」
「研究室に行くのか?俺も後で行く。」
そう言って2人は姿を消した。
勇太は研究室に向かって歩いた。
「ゴメン。遅くなって。」
研究室の奥の部屋に勇太以外の4人がすでに揃っていた。
「何かあったの?」
あきが心配そうに聞いた。
勇太はメンバーに言おうか言うまいか一瞬悩んだが、
「実は…」
先ほどの出来事を話始めた。