疑惑の2人
「魔術界にジルコニウムと繋がっている裏切り者がいるって。ルビーたちは今懸命に探してるみたいなんだけど。」
授業の合間、勇太たち5人は『扉の空間』に集まっていた。
貴司は続けて話した。
「僕が隔離されてたのもそのためだったんだ。クォーツは鉱山潜入メンバーは疑っていないみたい。」
「ってことは…俺たち以外だとモリオン、リシア、アメジスト、クォーツ、アクアは大丈夫と思ってイイんだ。」
勇太が言った。
「そうみたい。あと、ルビー、サファイア、エメラルドも。クォーツが言ってた、『人間界で接触してくるjewelsがいたら用心しておくように』って。」
「もう、接触してきてるんだけど。」
海斗が言った。
「オパールが『クォーツに注意しろ』って。」
「えっ?!それって…」
樹理奈が不安そうに海斗を見た。
「本当にクォーツが黒なのか、それともオパールが黒なのか、オパールがクォーツを疑っているだけなのか。俺には何とも。」
勇太は複雑な思いだった。
クォーツを疑いたくない思いは強いが、オパールも疑いたくないとも思っていた。
「どっちも違うんじゃないかなぁ…」
樹理奈が呟いた。
「お互いを信用させないようにされているだけなのかも。」
「でも、裏切り者がいるのは事実だ。」
海斗が厳しく言った。
「野上はどう思うんだ?」
海斗はずっと黙ったままのあきに聞いた。
「…分からない。」
あきはうつ向いていた。
「心当たりは?」
「…ない。」
勇太はあきが自分も疑われいると思っているのだと感じた。
晴明とペリドットは何か知っているのは確かだが、勇太には話そうとしてくれないことに勇太は引っ掛かっていた。
「ただいま…クォーツ?!」
勇太が帰宅すると部屋に晴明とペリドットに加えてクォーツまでもいたのだった。
「帰ってきたか。」
クォーツは床にあぐらをかいて座っていた。
「どうしたの?」
「ペリドットに聞きたいことがあって。そもそもペリドットとマーキュリーの接触から不信に思わなければならなかったのだ。」
「どういうこと?」
「タイミングが良すぎたってことだ。俺はマークされてたんだ。なぜマーキュリーが禁書のフラーレンの本のことを知っていたのか。俺も疑問には思っていた…」
勇太に説明しているペリドットを晴明がギロッと睨んだのでペリドットは黙った。
『何で?これ以上のことは俺には言うなってことか…』
「これで確証は得た。お前も用心しろ。」
そう言うとクォーツは姿を消した。
「晴明…何か知ってるんだろ?」
勇太は思いきって聞いてみたが、晴明はニヤリとしただけだった。
「よう、久しぶりだな。」
翌日、大学に向かって歩いている勇太の前にオパールが現れた。
「ペリドットは元気か?」
「うん、まぁ…」
「お前んちに昨日、クォーツが行っただろう?何しに来たんだ?」
「俺もよく分からなくて…」
勇太は何とかはぐらかそうとした。
「気をつけろよ。アイツも怪しいからな。どう言いくるめられたか知らんが油断するなよ。」
オパールはそう言うと姿を消した。
勇太は胸にモヤモヤしたものを抱えながら大学に向かった。




