魔術師たちの疑念
「何の用だ?」
勇太たちの研究室でモリオンが1人研究をしていると、背後にスーツ姿のクォーツが現れた。
「お前を信用して頼みたいことがある。」
「一応は信用されているんだな。」
モリオンはクォーツをチラッと見た。
「弟子のフリントストーンのことを黙っていたことはすまないと思っている。もう内通者の目星はついてきたからこそだ。それに、もともと鉱山潜入のメンバーは全員白だと思ってたしな。」
「で、頼みとは?」
モリオンは研究の手を止めた。
「おい!お前だろ!敵に通じてるのは!」
魔術界ではオパールがリシアに詰め寄っていた。
「違うわよ!何度も言ってるでしょ!何で今さら私が…」
「リチウムだったお前だったらあり得るだろ?!ってか、お前しかいない!」
「いい加減にしてよ!」
リシアは半泣きだった。
「その辺にしとけ。」
制服姿のターコイズがオパールを制止しようとした。
「騙されるな!じゃあ、誰だってんだ?!」
オパールの目は血走っていた。
「知らないわよ!」
リシアは叫んだ。
「うまいことアメジストやクォーツにとりいっても、俺の目は誤魔化せないからな!」
「いい加減にしなさいよ!」
アクアマリンがリシアを庇った。
リシアは泣いていた。
「リシア、ラピスが呼んでるから行っておいで。」
アクアマリンはリシアをその場から離れさせた。
リシアはすすり泣きながら歩き去った。
「下手くそ。」
ターコイズがボソッと呟いた。
「あー、やっぱり?」
アクアマリンがオパールを睨んだ。
「やっぱりバレてたか。」
オパールはあっけらかんとしていた。
「でも、なんで?」
アクアマリンが言った。
「本当の裏切り者をあぶり出すためだとさ。そいつにリシアを疑ってると思い込ませればボロを出すんじゃないかって。」
ターコイズがアクアマリンに説明した。
「裏切り者が分かったらちゃんと謝りなさいよ。あそこまで無意味に一方的に責めるのはやり過ぎよ。さすがにリシアが気の毒だわ。」
アクアマリンがそう言って姿を消した。
「ターコイズ、どう思う?」
誰も周りにいないことを確認してオパールが聞いた。
「リシアではないのは分かってただろ?」
「俺の予想では古株メンバーだ。パール、ジルコンあたりもあり得る。」
「パールだったらショックだな…ジルコンは裏で妹と仲直りしてたってことか。」
「クォーツとか?」
「クォーツ…だったらなんだ?ダイヤへの反抗か?」
「あり得なくもないだろ?」
ターコイズはオパールの言葉に黙ってしまった。
「俺はクォーツをマークしておく。ターコイズはアメジストをマークしておけ。」
「アメジストか…勘が良さそうなんだけど…」
「頼んだぞ。」
「みんなバカね。」
オパールたちのやり取りをこっそり見ていたガーネットが呟いた。
「それこそ思うつぼなのに。また動き出すかしら…ジルコニウム…いえ…」