樹理奈の恋?
「でもさー、ヒドイよね?!だって自分達が魔術界に巻き込んできて犯人扱いって!」
「うん。」
「あきちゃんだって好きで闇の力を手に入れたわけじゃないのに!ルビーたちが早く気づいてあげれていたらこんなことにはならなかったのに!」
「うん。」
「千年以上生きてるから?その辺の感覚とか思いやりが麻痺してるんじゃないかって思う時あるの!中島君が晴明にとり憑かれたときだって!」
「う、うん。」
「なんかね!魔術界って遅れてるの!人間界を見下してるところあるけど、感覚がまだ江戸時代ぐらいじゃないかって!」
「…うん。」
堰を切ったようにグチが止まらなくなった樹理奈に勇太は相づちを打つのが精一杯だった。
「私も、大学に入ったら彼氏できてキラキラした生活になるのかなって思ってたけどそうじゃなかったね。大学に来たのが不純だったからかな。最近、あきちゃんが羨ましいよ。」
「そっ、そういえば原田さんって彼氏とか…」
「一度もできたことないよ。芸能人と付き合ってたかとか合コン慣れしてるとか未だに思われてるけど、全然!」
「好きな人とかは?」
この勇太の質問に樹理奈の顔が固まった。
「えっ、いるの?」
「うーん…向こうはどう思ってるんだろうって。軽蔑されてるかもしれないし…」
勇太は驚いた。まさか樹理奈に本当に好きな人がいるとは思っていなかった。
「好きになっちゃいけないかも…私と関わると不幸になってしまいそうだし。」
「そんなことないと思うけど。」
勇太は相手が誰なのか気になって仕方なかった。
「じゃあ、明日学校でね。お休み。」
樹理奈はそう言って『扉の空間』から姿を消した。
「お帰り、勇太。」
部屋に戻った勇太をペリドットが出迎えた。
「ペリドット、やっぱり魔術界に裏切り者がいるみたいだ。」
「俺も探っているんだが、お前の仲間ではないとは思う。」
「なるほど、清太はそんなことを伝えるために主を呼び出したのだな。」
晴明が口を挟んできた。
「クォーツのことだよな?まぁ、そんな感じかな。」
勇太は風呂に入るために部屋を出た。
「晴明殿、目星はついていますね?」
ペリドットが言った。
「ふーむ。」
「あなたはもっと早くに気づいていたのでは?」
「そなたは意外と鋭いところがあるの。」
「やはり…だとしたら厄介です。動機は一体…」
「さぁの。」
晴明はチラッとドアを見た。
勇太が部屋の外でこっそり晴明たちの会話を聞いていた。
『晴明たちは裏切り者の正体に気づいてるのか…でも何で教えてくれないんだ…?』
勇太はそろっと階段を降りた。