闇の無力化
「えっ?!おっ、俺が…?そんなこと…」
自分が闇魔力核を無力化できるなんて勇太は思っていなかった。
リシアの闇魔力核を取り除くのに何人ものjewelsたちによる儀式を行ったと聞いていたので、自分1人でそんなことできるはずないと思った。
「中島君なら無力化することできるよ。闇魔力を打ち消すには光の魔力しかないから。それに、中島君の魔力は暖かくて強いよ。」
あきは勇太の手を握った。
「闇の穴に落ちたときも救ってくれたのは中島君の魔力。その時に確信したの。中島君は光属性の中でもかなりの魔力を秘めてるって。」
そんなこと言われても勇太にはピンとこなかった。
「私の闇魔力核に光属性の魔力を注いで欲しいの。そしたら…」
勇太はあきの真剣な顔に自信はないものの、
「分かった。」
と頷いた。
あきは自分の胸に勇太の手を持っていき、
「ここ。これが闇魔力核。冷たいでしょ?」
と言った。
「うん…本当だ…」
まるで氷を直にさわっているような冷たさだった。
あきの胸からじわじわと出てきた黒い冷気は勇太の手を包み込んだ。
「抵抗してるみたいだ。」
「うん。消されてたまるかっていってるみたい。」
この闇魔力核を高校生の時にモンドに入れられて以来、あきは感情を封印した。
勇太は大学からのあきしか知らないが、友人を亡くして感情も封じて孤独すら感じなかった高校時代のあきはどのように過ごしていたのだろうかー1人でマーキュリーの殺気も感じていたのに誰にも打ち明けられず、大学生になっても孤独を貫いたあきーしかし、感情を取り戻してから今はどんな気持ちなんだろうと勇太は考えた。
『これを封じたら少しはあきの心は救えるのだろうか…』
冷気はさらに勇太の腕を伝い、肩まで登ろうとしていた。
「中島君…」
あきは心配そうに勇太を見つめた。
「大丈夫。」
勇太の手は冷気で感覚が麻痺しかかっていた。
『やるか…!』
勇太が手に魔力を込めようとした時だった。
「趣味の悪い部屋だの。」
突然、晴明の声がしてビックリして振り向くと、離れた場所にあるソファーに晴明がニヤニヤしながら座っていた。
「せっ、せっ、晴明?!」
勇太はビックリしすぎて声がひっくり返っていた。
なぜ突然、このような場所に晴明が現れたのか理解できなかった。
「やれやれ。」
晴明は立ち上がり、勇太たちに近づいてきた。




