進歩
勇太は今日は1限目の授業が始まる前から緊張していた。
1限目の授業が終わる直前に大きく深呼吸した。海斗が何か話かけようとしてきたが、チャイムが鳴ったと同時に『扉の空間』に連れてこられた。
「よし、やるか。」
ペリドットが目の前にいた。
勇太は魔力を球体にする練習を始めた。
『手の上でおもちとかお団子を丸めるイメージ』だと一昨日、海斗から教わっていた。
「おぉ、すげぇぞ!」
ペリドットが歓喜の声をあげた。手のひらの上でついに勇太の魔力が球体になった。しかし、5秒ほどで消えてしまった。
「今度はさっきの状態を維持できるようにするぞ。手のひらの魔力に意識を集中させるんだ。」
何度もやって30秒はもつようになってきた。
「今日はやるじゃないか!少し休憩するか。」
ペリドットは腰かけて勇太にチョコレートをひとかけ差し出した。
勇太も腰かけてチョコレートをもらい、口に入れた。
「あのっ…。ペリドットはもともと人間界にいたんですか?」
勇太の突然の質問に ペリドットは目を丸くした。勇太が一晩考えて思いついた質問だった。
「俺もお前と一緒だった。jewelsは大半そうだな。」
勇太は一字一句聞き漏らすまいと真剣な顔で聞いた。
「俺なんかまだまだ新参者だぜ。初めてここに来たときにはもうアメジストがいたんだぜ。見かけによらないだろ?」
勇太は頷いた。
「あの時はtwelvesじゃなくてelementsのメンバーが扉を開けてたな。twelvesはここ50年くらい前に結成されたからな。」
「Elementsって?」
勇太は前のめりになって聞いた。50年前というのも気になっていたが、先にelementsという新しく出てきた単語を解決したかった。
「ルビー、サファイア、エメラルド、ダイヤ、タイガーアイ、オニキスだったかな…それぞれの属性魔術のスペシャリストたちだ。」
「属性魔術…?」
「火とか水とか自然の力を利用した魔術だ。人それぞれ得意の属性があって…まっ、属性魔術はお前にはまだまだ先だな。」
そう言ってペリドットは立ち上がろうとした。
「年、50歳すぎてるのですか?」
勇太がすかさず聞いた。
「あぁ、実年齢はもっとだぞ。」
勇太は驚いた。ペリドットは20~30歳代に見えるからだ。
「また、色々話してやるから。休憩終わりだ。修行再開するぞ。」
勇太も立ち上がり、また手のひらの上で球体を作る練習を始めた。