後期スタート
後期が始まった。
後期からは予備校の講師を招いての国家試験対策講義が始まる。
勇太たちのように研究を終わった者もいれば、年内まで研究を続ける者もいた。
「松下ー!ここ教えて欲しいんだけど。」
講義の合間の休憩時間に彬や晋也が海斗に分からない部分を教わりに来ていた。
「お前、まだ彼女と最後までやってないのか?」
「おいおい、誠実すぎるぞ!」
彬たちは勇太とそんな話もしながらも講義は真剣に聞いていたので、みな国家試験合格に対しては本気であった。
『確かにあの夜も…抱き合って寝ただけだけど…あき、すぐ寝ちゃったし…キスぐらいはしたけど…』
勇太はそう思っていたが口には出さなかった。
あきは大学にちゃんと来ていた。
休憩時間に樹理奈がよくあきのところにしゃべりに行っていた。
時々、2人で昼ご飯を一緒に食べていた。
「樹理奈、野上さんと最近一緒にいるよね?いつの間に仲良くなったの?」
「研究室一緒じゃん。」
「そういえば、大林ともよくしゃべってるよね?」
「大林も研究室一緒じゃん。あの研究室、異様に仲良いのよ。」
「野上さんって彼氏できてから変わったよね。」
「樹理奈も研究室に入ってから何か変わったよね。付き合い少し悪くなったし。」
「樹理奈って意外と今まで彼氏いないよね。告白はされてたみたいだけど。」
「ふーん。そうだっけ?」
「元芸能人のわりに地味よね。前から思ってたけど。しかも最近仲良いのが野上さんと大林だし。」
樹理奈の取りまきの女子たちが廊下でそのような会話をしているのをたまたま勇太は聞いてしまった。
「気にするな、中島。」
通りかかった賢二が言った。
「ただのつまらない女の嫉妬だ。気にしていたら身が持たないぞ。」
講義が始まって1週間経ったころには勇太と海斗は大学入学当初の彬らと晋也と賢二の5人でよくいるようになっていた。
放課後は勇太と海斗と貴司は研究室で、あきと樹理奈は講義室で勉強して、勇太はあきと校門で待ち合わせして駅まで一緒に帰っていた。
あきは以前よりも明るくなって勇太はホッとしていたが、お互いマーキュリーを警戒しているのが分かった。
「明日は土曜だけど、学校来る?」
「うん。樹理奈ちゃんと一緒に勉強するつもり。」
「お昼ご飯、久しぶりに5人で食べない?」
「うん!イイね!どこにするの?」
そんな会話をしながらあきと手を繋いで歩いて帰る時間は幸せだった。
しかし、勇太はマーキュリーがいつ現れるかずっと警戒していた。
あきは教授を避けているのか研究室に来ようとしないのが分かっていた。
研究室にいる教授と助手は偽者で鉱山潜入以来、本物に会っていなかった。
晴明も帰ってこなかった。
『魔術界で何か起こっているのか…』
勇太たちは鉱山潜入以来、魔術界にも顔を出していなかった。
気になって勇太はペリドットに魔術界の様子を聞いた。
「上層部で何か起きているのかもしれないが…すまんな俺の魔術界での行動が制限されているんで分からないんだ。」
鉱山に潜入して、
敵の金属中毒はほぼ全滅したが、
敵のボスの正体を知って、
行方不明だったガーネットが現れて、
マーキュリーの驚異を感じながら、
大学生活を送って、
勇太はそんなことを考えながらベッドに横になった。