ガーネットからの警告
勇太はあきと抱き合って眠った。
あきの髪から香るシャンプーの匂いとあきの体の柔らかさが心地よかった。
翌日の早朝、勇太が目を覚ますとあきがじっとこちらを見つめているのに気づいた。
「おはよう。」
「うふふ。おはよう。」
2人は目が合って笑った。
しばらくしてあきは帰った。
帰り際、
「大好き。」
と言ってほほにキスしたあきの笑顔が今までで1番かわいく、いとおしく感じ、勇太は思い返してはにやけていた。
大学に行き、勉強をし、海斗と貴司と昼ご飯を食べ、また夜まで勉強する日々が夏休みが終わる9月中旬まで続いた。
樹理奈は3日に1回研究室に顔を出していたが、あきは現れなかった。
みな、あきが解放されたのは知っていた。
あきが研究室に顔を出さない理由はあきが勇太の部屋に現れた翌日に分かっていた。
「中島勇太よね?」
勇太が駅から大学に向かって歩いていると、いつの間にか勇太の横に女が歩いていた。
女はjewelsが魔術界にいるときに着ている装束姿でワインレッドの袴を履いていた。
勇太はその顔に見覚えがあったが、思い出せなかった。
しかし、袴の色は名前の宝石の色と同じー赤い宝石は…勇太が考えていると、
「他の人には私は見えないように術をかけてるから。前見て歩いておいて。」
女の声は聞き覚えあった。
鉱山を脱出する時に会った錆の声だった。
「ガーネットさんですね?」
勇太が前を見て歩きながら言った。
「正解。さすがね。」
ガーネットが言った。
「あき、すぐにあなたの所に行ったみたいね。かわいいところあるわ。あきが人間界に戻ってきてあの子にもあなたにもリスクが出てきたのよね。」
「リスク?」
勇太が聞き返した。
「私が殺しそこねた金属中毒は2人いるの。そのうちの1人はあきの命を確実に狙いにくる。」
「まさか…マーキュリー?」
「えぇ、正解。儀式前にアーセニックと鉱山にいたけど殺しに行った時にいなかった。どうやらモリオンが拠点を移動させたときにタイミング良く出ていったようね。今、私の式神がマーキュリーを探してるけど全然ダメなの。」
「だから、あきに脱出するように促したのですか?マーキュリーを誘き寄せるために。」
勇太は少しずつガーネットに対する怒りがこみ上げてきた。
あきがガーネットを慕っているのは勇太は知っていた。
それなのに、マーキュリーを誘き寄せるためにあきを利用するなんてー勇太は拳をギュッと握りしめた。
「あの子にこれ以上辛い思いをさせたくなかったからっていうのが本音よ。あの子がモンドに闇魔力核を入れられたのは気づいていた。それもあったから鉱山に潜入したの。私は弟子たちが苦しんでいる時に何も助けてあげられなかった。だから…」
勇太はガーネットをチラッと見た。
ガーネットは悲しそうな顔をしていた。
「あきにあなたがいて本当に良かったと思っているわ。愛してくれて必死で助けに来てくれる素敵な王子様の存在がなければあきはシルバーの呪いを受け入れてたかもしれない。あの子にはあなたが必要なの。だから、あなたも警戒しておいて。マーキュリーはあなたにも何か仕掛けてくるかもしてない。マーキュリーはシルバーに惚れていたからあきに対する怒りと憎しみは相当なものよ。」
そう言ってガーネットは姿を消してしまった。
『俺にとってもあきは必要なんだ。あの笑顔を守りたいんだ…』
勇太はそう思いながら校門をくぐった。
『あきはきっと周りを巻き込みたくないんだ。だから大学に来ないようにしてる。』
勇太はそう思っていた。
『でも、それじゃ今までと一緒だ。あきがまた1人で問題を抱えようとしてる。』
毎日電話とメールをしているが、あきからそのことに触れることはなかった。
“明日から講義だね。
何か起こっても大丈夫だから。
俺のこと、頼ってくれても良いんだよ(^_^)
明日会えるの楽しみにしてるから(^o^)”
勇太はあきにそうメールを打って寝た。
明日から後期が始まる。
大学生活も後、少しー