モンド
勇太と海斗と貴司の3人は『路傍園』で昼ご飯を食べに行った。
3人はそれぞれ昨日の潜入での話をした。
「勇太、本当にシルバーと戦ったんだな…」
海斗は感心していた。
「でも、あきが目を覚まさなきゃ俺は殺されてたな…」
「シルバーを殺ったのはガーネットだ。」
3人が座っているテーブルにモリオンが入ってきた。
「今日は奢れないからな。俺は…餃子定食で!」
モリオンは貴司が勇太たちのテーブルに人払いの術がかかっているのを確認して話始めた。
「ガーネットはダイヤの密命を受けて鉱山に潜入していた。その目的は『あるもの』を手に入れるためだったらしい。ガーネットはダイヤの予想外の行動に出た。コッパーを殺し、自分がコッパーに成り代わった。そして、正体がバレそうになったら魔術界に捕まったことをして何人か消していたそうだ。ちゃんと闇魔力核も回収してたのはガーネットらしい。」
勇太たち3人はまばたきせずモリオンの話を聞いていた。
「そして、ほとんどの金属中毒の闇魔力核を回収したと。ダイヤも敵の弱体化に大いに貢献してくれていたとはいえかなり困惑していた。魔術界の掟を破ったからな。」
モリオンは運ばれてきた餃子をほおばった。
「しかし、まだ敵の脅威は完全には消えていない。ボスであるモンドがまだ存在している限り。」
「モンド…」
勇太は夢の中でダイヤがボスをそう呼んでいたのを思い出した。
「俺達のボス、金剛大也が自らをダイヤと名乗るようになった直後にモンドと名乗ったそうだ。」
「ダイヤ…モンド…」
勇太はボソッと呟いた。
「そう。ダイヤとモンドはそれぞれ完全ではないということだ。ダイヤの力をモンドが奪った。それが金属属性魔術と闇属性魔術。それらの力が奪われた直後の見習いたちは金属と闇を使えなくなった。というのも、初めに細胞に移植される魔力核はダイヤの力の一部だからな。」
「ってことは、奪われる前に魔術師になった人は金属と闇が使えるってこと?」
貴司が聞いた。
「そう。今いるメンバーでは…クォーツ、アメジスト、ジルコンあたりか…」
「ルビー、サファイア、エメラルドは?魔術界創設メンバーって…」
海斗が聞いた。
「アイツらは違うらしい。ダイヤの弟子でも安倍晴明の弟子でもないようだ。」
モリオンは勇太をチラッと見た。
「彼女のことを知りたいって顔だな?ダイヤの特殊な空間で軟禁状態…それぐらいしか俺は知らない。」
勇太はあきのことがずっと気になって仕方なかった。
今すぐ会いたい、無事をこの目で確認したいーそんな思いがさら強くなった。
「軟禁って…そんな…」
貴司が言った。
「魔術界としては妥当な処分といえるだろう。さて、研究をキリの良いところまでで切り上げたら魔術界に戻る予定だ。今回のことで色々と気になることができた。また何か分かったら教えてやるから人間界で用心しながら普通に生活しておけ。」
モリオンは食べた分の代金を支払って店を出た。
しばらくして、勇太たちも店を出て研究室に戻った。