久々の帰宅
あきはダイヤに連れられ、他のjewelsたちも魔術界にとどまり、勇太たちは人間界のファーストフード店へ戻された。
「勇太、大丈夫だ。」
海斗は勇太の肩にポンと手を置いた。
「…うん。」
勇太はうつむいたままだった。
「中島君…今日は帰ろうか。」
貴司の提案でみな人間界の自宅に久々に帰ることにした。
「ただいま。」
勇太は久々に自宅の玄関を開けた。
「おかえりー。」
奥の台所から母親の声が聞こえた。
久々に聞いた母親の声だったが、母親はいつも通りといった感じだった。
勇太の偽者が勇太の代わりをしてくれていたためだった。
勇太は自分の部屋に向かった。
「おう!勇太、おかえり!」
ペリドットが勇太を出迎えた。
「ペリドット!戻ってたんだ。オリーブはいいの?」
「いやー…晴明殿が俺のことをダイヤにバラしてくれたもんで。ダイヤは俺のしたことを咎めないって言ってくれたんだ。その代わり、勇太の力になってやれって。たまには魔術界にも行くつもりだ。」
「クォーツにもバレたよね。そうだ!『超スタミナニンニク』のカプセルありがとう。とても役に立ったよ。」
ペリドットと話しているうちに勇太は少しずつ元気になっていた。
「それは良かった。すまなかったな。分かってたのに、お前に辛い思いをさせてしまった。鉱山潜入もあれでしか手助けできなかったんだ…晴明殿に手を出すなと言われてたんで…でも、宝石核を通してちゃんと見てたんだ。お前は…本当にスゴいことをした…果敢にあのシルバーにたち向かって、あきを救い出せたんだ。」
あきの名前が出た途端、勇太はまた辛さが込み上げてきた。
「でも…しばらく距離を置くことになったんだ…」
あきとの幸せな時間を取り戻すために奮闘した。シルバーとも戦った。それなのにー
「でも、あきが無事で良かったって思わなきゃいけないよな。俺、今度こそあきと正面から向き合おうって思ってたのに…」
「勇太…待つのも愛情だ。もし、お前があきの立場ならあきと同じことをしたかもしれない。あきはシルバーにお前を殺されることだけは避けたくてお前の目を盗んでこの部屋に来たんだ。あきは必死だった。俺もお前を傷つくことだけは避けたかったが…」
「ありがとう。止血をしてくれたのペリドットなんだよね…」
「本当にすまない。俺にはあれぐらいしかできなかった。」
「いいよ、ペリドット。」
今回のことで魔術界にペリドットの存在が再認知されたと勇太は思った。
その危険を犯してまでペリドットは自分の手助けをしてくれたことに勇太は感謝していた。
「ダイヤ、戻ったわよ。」
魔術界の『光と闇の空間』にダイヤの目の前にガーネットが現れた。ガーネットは喪服ではなく、ワインレッドの袴を履いた装束姿だった。
「ガーネット…君は何故あそこまでしたんだ?」
ダイヤは困惑気味だった。
「何故って?ちゃんと闇魔力核を回収したわよ。ほとんどってとこだけど。」
ガーネットの周りには十を超える闇魔力核が宙に浮いていた。
「掟を破ってって言いたいだろうけどね。」
ガーネットは無邪気にニカッと笑った。
「それで、ボスとはどんな話をしたの?行ったんでしょ?『常闇の空間』に。お陰であきと王子様は無事に脱出できたけど。」
ガーネットの表情が突然変わり、ダイヤを睨んで言った。
「…君はそこまで…」
「ぬるいのよ、あんたは。昔っから。」
ガーネットはダイヤを睨んだままだった。
「もう一度言っとくわ。私が回収した闇魔力核は金属中毒の“ほとんど”のもの。つまり、何故かいなかったヤツが2人。それらはまだだから。」
ガーネットはダイヤに背を向けた。
「闇魔力核は全部あげる。私にはもう必要ないから。それと、身の回りには注意してね。内通者の目星はついたわ。」
ガーネットはそう言って宙に浮いたままの闇魔力核を残して姿を消した。
その夜、勇太は夢を見た。
真っ暗な空間にダイヤと晴明が並んで立っていた。
その2人の前にダイヤそっくりの黒の装束を着た男が立っていた。