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闇の中の記憶

「中島君…中島君…」

あきの声に勇太は目を覚ました。

「ここは?」

「分からない。私達、闇の穴に落ちてたはずなんだけど…」

勇太は起き上がって辺りを見回した。

疎らに草が生えた地面、目の前には古びて門や壁が崩れ落ちている大きな屋敷跡があった。

「現実じゃないみたい…」

あきが呟いた。

「時代劇のセットみたいな…あそこに誰がいる。」

勇太が指差した場所はくずれた壁の近くに烏帽子を被った装束の男が立っていた。

「行ってみよう。」

勇太とあきは男の近くに走っていった。

「あのー…せっ、晴明?!」

晴明と同じ格好だと思っていたが、男の正体は晴明だった。

晴明は勇太に全く気づいていなかった。

「晴明?」

勇太は晴明を呼んだが、晴明は勇太の声を聞こえていないようだった。

「何となくだけど…私達、過去にいるのかもって思ったんだけど、違う気がしてきた…記憶…誰かの記憶の中…記憶を見せる術とは違うみたいだけど。」

「記憶…」

勇太は晴明をじっと見た。

晴明は崩れた屋敷を見ていた。

突然、晴明が振り返った。

「大也か。」

勇太とあきも驚いて晴明の視線の先に注目した。

晴明と同じ烏帽子と装束の姿だったが、そこに立っているのはまさしくダイヤー金剛大也だった。

「晴明、ここにいたか。」

ダイヤが言った。

「また弟子入り志願の者が来た。汚ならしい格好をしていたが、あれは貴族の間者だ。手がきれいだったからな。」

「そなたも大変だの。迷っているのか。」

「…俺は貴族のために魔術を創ったのではない。弟子もどこぞの馬の骨か分からぬ者を取りたくない。俺には清太と小春で十分足りている。」

「わしとこの風子と信子も忘れんでくれ。」

「あそこにまた屋敷が建った。ここはどんどん廃れていく。」

ダイヤは遠くを指差した。

大きく豪華な屋敷が建っていた。

屋敷の周りには人の往来や牛車が見えた。

「あそこには底知れぬ貴族の欲望が渦巻いている。己の権力の誇示をしたいがためのな。」

「あの屋敷の主が昨日俺の所に来た。礼はたっぷりするから上に贈る金や玉を術で出してくれだと。あいつらは魔術を勘違いしている。俺は…そんなために魔術を…」

「そこにいるのは誰だ?」

晴明は勇太とあきの方をギロッと睨んだので、2人は驚いて固まってしまった。

しかし、晴明が見ていたのは2人の後ろで隠れて晴明とダイヤを見ていた男だった。

男の服はボロボロで、痩せ細っていた。

「魔術師の金剛様ですね?」

男は上目使いでニヤニヤしながらダイヤに近づいていった。

「私にも魔術の恩恵を頂きたく…」

「何が望みだ?」

ダイヤが聞いた。

「貴族のような暮らしです。今、貴族が豪華絢爛な生活を送っているのはあなた様が貴族に魔術の恩恵を与えているからだとか。」

「誰がそんなことを!貴族のために術を使ったことはない!」

ダイヤが怒鳴った。

「しかし、あなた様が田に水を増やし、稲を潤し、米を増やしていただいたことで、年貢の取り立てがさらに増えたのは事実ですよ。」

男は不気味な笑みを浮かべた。

「大也、相手をするな。」

晴明が男に背を向け立ち去ろうとした。

ダイヤがも晴明に続こうとした。

「あなた様の魔術は私を救っては下さらないとは。」

男は去っていったダイヤに向かって叫んだが、まだ不気味な笑みを浮かべていた。

突然、辺りが真っ暗になり、明るくなったと思うと勇太とあきは今度は別の場所に立っていた。


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