男子会2
「今ここで松下君にコツを教えてもらいたいよ。」
貴司が言った。
「人間界では魔力を出すなって言ってたぞ。」
勇太がペリドットに言われたことを思い出して言った。家で練習したいって言ったら止められていたからだ。
「あっ、そっか。確かjewelsにならなきゃダメだって言ってたね。」
貴司は笑っていった。少し酔いがまわってきているように見えた。
「…俺たちは向こうに良いように利用されてるんだろうな。」
海斗が呟いた。勇太も貴司も黙ってしまった。
「でも、逆に利用してやりたいんだけどな…」
海斗が目を充血させて言った。海斗も酔ってきたと勇太は分かった。
「魔術で人間界に干渉してはいけないのに俺たちに魔術を教えるのは本当に敵と戦うためだけなのかな?」
勇太は言った。貴司と海斗も考え込んでしまった。
「戦う仲間を増やすためだって言ってたな。行方不明とかやられたとかで劣勢だって…本当にそれだけなのか…」
海斗も言った。貴司はメモをめくりながら、
「ガーネットが行方不明で、オニキスがやられたって。だからjewelsレベルの野上さんを巻き込もうとしてるんだよね。魔術師同士の戦いってどんな戦いなんだろう…」
と言った。
それからしばらく3人は黙りこんでしまったが、貴司がまた口を開いた。
「実は気になってたんだけど…野上さんとは中高で一緒だったんだ。5年前に扉が開いて1年後に閉じたんだよね…高1~2のことってことなんだよね。」
海斗も勇太も貴司をじっと見た。
「…その間に野上さんと仲が良かった山口さんが亡くなっているんだ。野上さんは5年前に一緒に修行したのは2人だったって。もしかしたら山口さんも魔術師なってて、戦いで亡くなったのかなって思ったんだ。こっちの世界で事故死にしておいて…考えすぎかな?」
「友達が死んで…鬱になったって聞いたことがあるんだけど…」
勇太は正樹から聞いていたことを思い出した。
「それは野上に聞かなきゃ分からないな…」
酔いがまわってきたこともあって話はだんだん魔術のことからそれていった。
貴司は終電に乗って帰っていった。勇太は海斗の部屋に泊まっていくことにした。
先にシャワーをさせてもらい、海斗からジャージを借りてソファーで寝かせてもらうことにした。
海斗がシャワーをしている間、ソファーに横になってうとうとしていると、海斗のケータイが鳴り出した。
チラッとケータイを見ると発信者の名前が表示されていた。
『紅 玲夢』
まだ復縁を迫っているのだろうか、それともまた付き合った…それはないか、勇太はそう考えながら眠ってしまった。