目覚め
「お前は女がお前の何に不満を持っているか考えたことはあるか?」
シルバーが勇太に言った。
「分かるわけないだろ!」
勇太はシルバーの言うことに耳を貸さないようにしていたが、少しは気にしていた。
「もっと触れてほしい、そばにいてほしい、抱きしめてほしい。そんな簡単な女心も分からないなんて男としてダメだ。男以前に自分には女が不釣り合いだと思ってなかったのか?代わりに俺が体を触りまくってやった!」
シルバーはニヤニヤしていた。
「魔術師としても成績もだ!女より何1つ秀でているものはないだろ?」
「うるさい!」
勇太の抑えていた感情が爆発した。
勇太が一番気にしていたことだったからだ。
勇太はシルバーに向かってROOKで何発も攻撃した。
しかし、シルバーは軽々とすべての攻撃を避けた。
「この程度で女王にふさわしい男だと本気で思っていたのか?バカが!プラチニウムは俺がもらってやる!王になって俺と1つになるんだぜ!そして、俺達の子供にボスが転生する。そうなりゃ、プラチニウムは用済みになるから俺の可愛い可愛い奴隷の1人にしてやるよ!」
「何だって…」
勇太はあきが鉱山に連れてこられた理由を知って愕然とした。
「そんなこと…絶対にさせない!」
「おせーよ!」
勇太が構えようとしたが、大きな銀色の蛇が勇太の体にグルグルと巻きついて身動きがとれなくなった。
「くそっ!」
勇太はなんとか蛇から抜け出そうともがいたが蛇はピクリとも動かなかった。
「銀蛇。そちらでいう式神ってところだ。俺の女は返してもらうぜ。」
シルバーは勇太の横を通りすぎ、あきに近づいていった。
「あき!目を覚ますんだ!逃げろ!」
勇太はあきに向かって叫んだ。
「そいつに巻きつかれると術は使えない。呪いをまとっているからな。じゃあ、俺達が1つになるところをその間抜け面でしっかり見てろよ。」
シルバーがあきを抱き起こそうとした。
突然、あきの目が開いてシルバーの横腹に短剣を刺した。
「んー?」
シルバーは刺された横腹を見ていた。
あきは起き上がって勇太を見た。
「…中島君。」
「あき!」
あきがシルバーを刺したからか、蛇の拘束がゆるんだので、勇太は蛇からぬけることができ、あきに向かって走った。
あきも勇太に向かって走ろうとしたが、シルバーに腕を掴まれてそのままシルバーに押し倒されてしまった。
「あき!…うわっ!」
勇太は先ほどの蛇にまた拘束されて身動きがとれなくなってしまった。
あきは両手首を蛇に拘束されていた。
「おいおい、よくもやってくれたな。」
シルバーは刺された短剣を投げ捨てた。
傷口から血が出ていたが、みるみる塞がっていった。
シルバーはあきに覆い被さった。
「俺の術が完全には効いてなかったのだな?お前に仕込んだ蛇のからの交信が一瞬途絶えたことがあった。俺の蛇に何かしたか?答えろ!」
シルバーはあきのあごを手でくいっと掴んだ。
「やっぱり気づかれてたんだ。私から蛇を抜いたんでしょ?自分で確認したら?」
あきは負けていなかった。
「この状況でよく生意気言えるな。まぁ良いだろ。コッパーのババアに怒られるが、俺が王になる前にお前を…」
シルバーの手があきのドレスの裾をめくろうとすると、あきの両手首を拘束していた蛇がシルバーに飛びつき、首に巻きついた。
「ぐっ…」
シルバーはのけ反って倒れた。
あきは起き上がた。
勇太を拘束していた蛇もシルバーの体に巻きついた。
「あき…」
勇太はヨロヨロと立ち上がった。
あきは悲しそうな顔で勇太を見ていた。
「お前はもう…その男のもとには戻れない…」
シルバーが首を絞められ苦しそうにしながらも言った。
「本気で…殺そうと…したんだぜ!増幅された…不安と憎しみで…お前は…もう…」
「分かってるわよ!」
あきが叫ぶと蛇はより強くシルバーの首と体を絞めた。
シルバーは苦しそうにのたうち回っていた。
「あき、もう良いから。とにかく脱出しよう。」
勇太はあきの手を握って走ろうとしたが、あきは動こうとしなかった。