勇太VSシルバー
シルバーの手刀が勢いよく飛んできた。
『強靭な…盾!』
勇太はローブを被ったまま魔法陣で盾を作ってシルバーの攻撃を防いだが、風圧でローブが脱げてしまった。
「やっぱりお前か!俺の女を連れて!」
シルバーはさらに攻撃しかけて来そうだったので勇太は急いで脱げたローブの上にあきを寝かせた。
「あきは返してもらう。」
勇太が言った。
「バカか?そいつはもう俺のモノだ!後は喰ってやるだけ。それに女はお前のところには戻れない。お前を殺そうとしたのだからな!」
「あきの意思ではないのは分かっている!」
勇太も負けじと言い返した。
「ふん、お前、本気でそう思っているのか?」
シルバーはニヤリと笑った。
「俺は女の中にあるお前への不満を増幅してやっただけだ!少しでも不満があれば簡単に大きくなる。」
『俺への不満…』
勇太は内心少しショックを受けたが、
「それでも俺はあきを取り戻す!」
「じゃあやってみろよ!」
シルバーの周りには無数の針が現れた。
針の先は勇太に向いていた。
『少しでも防ぎきれなかったらあきにも当たる…』
針が一斉に勇太に向かって飛んできた。
勇太は大きな魔法陣の盾で針を防いだ。
針は全て盾に刺さったが、ぐいぐいと盾を突き破ろうとしていた。
「さぁ、いつまでもつか。その針には呪いをかけている。刺さると俺の奴隷になってもらうぞ。」
シルバーは得意顔だった。
『…予測済みだ!』
盾を破壊寸前の針は先端から徐々に溶け出し、跡形もなくなった。
「なるほど…魔法陣に酸を仕込んでいたというわけだな。」
シルバーは悔しそうだった。
「少しはできるみたいだな!」
「あきに教えてもらったんだ。」
勇太はまだ水属性魔術を取得していないが、こっそりあきに『化学反応』を教えてもらっていた。
「理系だから『化学反応』は理解しやすいと思う。かなり応用効く術だし。」
勇太からあきに頼んだのだった。
勇太の目の前であきが海斗に教えていたのを見て嫉妬しているのもあった。
「相手が金属だからこの術ってかなり有効だと思うんだけど、何で始めの段階で教えてくれないのか謎なのよね。だって、私たち理系だから属性に関係なく化学反応は使いやすいのに。魔術界にそんな発想がないのが古いというか…」
あきはガーネットから教わったとのことだった。
勇太と海斗以外にも貴司はモリオンから教わり、かなり得意だと聞いていた。
樹理奈が使えるかどうかは勇太は知らなかった。
『あき、ありがとう。俺、必ず守り抜くから。』
「シルバーとの戦いは避けたいが、お前はそうもいかんだろうな。」
『扉の空間』でクォーツが勇太にそう言っていた。
「アイツの言葉に耳をかすな。動揺をさそうのが上手い。だからこそ…」
『あきを信じ抜く、守り抜く気持ちを持ち続ける。』
勇太はクォーツの言葉を思い出していた。
勇太は振り返りチラッとあきを見た。
『これから何が起こっても私のこと信じてくれる?』
あきの家に食事を呼ばれた帰り、勇太にあきは言った。
『信じれる。今なら、ちゃんと…』