海斗の過去ー高校~予備校
「お前にずっと会いたかったんだ。魔術界にはもったいない才能の持ち主だと。」
ニッケルが言った。
「こちらに来ないか?」
ニッケルは海斗に手を差し出した。
「行くわけないだろ?何言ってるんだ?」
海斗は構えた。
「お前には我々の王になる素質がある。王になればお前が欲しかったものが手に入るんだぞ。」
「ROOK!」
海斗がニッケルに向けてROOKを放った。
ニッケルに直撃したと思われたが、
「ほう、なかなか。対ROOK用に開発した盾もボロボロだな。」
ニッケルの手にはいつの間にか魔法陣が描かれた盾があったが、ボロボロに崩れていった。
「ちっ!」
海斗はまた構えた。
「お前が欲したものを知ってるぞ。プラチニウムー野上あきだろ?」
海斗は構えを緩めなかった。
「いつの間にか親友に取られてしまって、お前もかわいそうな男だ。お前が王になればプラチニウムの心も体もお前のものだ。シルバーが王になるのに反対のヤツが多いんでな。俺もシルバーが王になるのに正直不満がある。」
海斗がROOKを放とうとした時だった。
海斗の足元に魔法陣が現れ、不気味な黒い光りを放った。
「しまった!罠か?!」
「お前たちを呼び止めた時に仕掛けておいた。さぁ、お前の心の闇を、お前の今までの記憶を見せるんだ。」
海斗は黒い光に包まれ、飲み込まれた。
海斗は都市の中高一貫の進学校出身だった。
高校でも成績優秀で、国公立の医学部志望だった。
父親は医師で代々病院を経営していて、兄も3浪して私立の医学部に進学した。
両親からは海斗も医学部に進み、医師になるのが当然と思われていて、海斗もそのことに何ら疑いを持っていなかった。
受験日当日、海斗はインフルエンザにかかり欠席し、第一志望校しか願書を出していなかったため、浪人生として予備校通いをするかとになった。
父親には罵倒され、浪人時代も今も遊び呆けている兄の姿を見て海斗は自分の進路に少しずつ疑問を持つようになった。
予備校に通い出した海斗はそんな父親たちに反発するかのように遊びだした。
髪を派手に染め、夜な夜な仲間や女と遊んでいたが、成績は維持されていたので誰も海斗を注意しなかった。
だんだん荒れていく海斗を見て、予備校の講師が海斗にある大学のパンフレットを見せた。
「松下、滑り止めに薬学部なんかどうだ?ここ、一條学園大学は来年度薬学部ができるそうだ。」
薬学部なんて医学部に行けなかったヤツが行くんだろーはじめ海斗はそうバカにしていたが、次第に医学部進学への熱意をなくし、父親への当て付けの意味もこめて、一條学園大学薬学部だけを受験した。
海斗は余裕で合格した。
医学部を受験していなかったので父親はカンカンに怒ったが、母親がなんとかなだめ、海斗は一條学園大学へ入学することになった。