作戦会議
「敵の正確な人数は不明だ。それに錆と呼ばれる式神が何体もいて絶えず見張っている。」
モリオンが錆の絵を描いた。
錆は黒いローブを着て、フードですっぽりと顔を隠した人形で勇太が以前見たことがあるものだった。
「こっちに不利なのはかわりないわね。」
アメジストが腕をくんで言った。
「だから、リシアも必要だ。鉱山の中の地図を書いてくれ。」
「中の入れ替えがなければ…多分ないと思うけど。」
リシアが鉱山の中の洞窟の場所や誰がいるかなどを書き出した。
「当然だけど奥に行けば行くほど強いヤツがいるから。シルバーはここ…ボスはここ…」
リシアは地図を指さしながら説明した。
シルバーがいるという奥の部屋にあきがいるー勇太はそう感じた。
「マーキュリーもそうだけどアーセニックとか実力者ではないけど特殊能力が面倒なのもいるわね。」
「敵にも特殊能力あるんだ?」
貴司が聞いた。
「マーキュリーは対峙したことあるから感じたことがあると思うんだけど、相手の負の感情を引き出すことができるのよ。イヤーな感じになるでしょ?それが野上さんには効かなかったからマーキュリーは野上さんをつけ狙ってたってわけ。」
「Jewelsでもマーキュリーと戦いたくないヤツは多い。アーセニックはあまりデータがないな。」
モリオンが言った。
「マーキュリーとは違って精神ではなくて内臓の方への能力、気分が悪くなったりとかって聞いたことあるけど、めんどくさがりだからあまり表には出てこないわね。目を会わせなければ大丈夫みたいだけど。」
「シルバーは女限定で誘惑、洗脳が得意だ。コッパーは…クォーツ、知ってるか?何度か戦っているだろ?」
モリオンがクォーツに聞いた。
「ないんじゃない?あの婆さんは。」
アメジストが代わりに答えた。
「他の連中もデータが乏しい。リシア、分かること全部教えろ。」
「もう何回も話してることなんだけどー…」
「メタモルフォシス様。」
作戦会議が一通り終わった後、勇太は魔術界の街中でオリーブに会った。
「お怪我は?」
「大丈夫だよ。」
「良かった。ペリドット様もずっと心配されていました。」
「ペリドット、やっぱりそっちにいるの?」
「えぇ。ご自身の空間に身を隠しておられます。今、農園で『超スタミナニンニク』の収穫をされています。」
「そっか。ずっと呼びかけに答えてくれないからもしかしてって思ってたんだ。オリーブ、ペリドットに伝えて。俺、敵のアジトに行ってあきを取り戻すって。」
「メタモルフォシス様、存じております。オパール様もあなた方の動きに気づかれたようです。クォーツ様の元に向かわれました。」
「…まぁ、いずれ知られることになったと思うけど。」
「それと、私とペリドット様は以前マーキュリーを追って敵のアジトに潜入したことがあります。」
「そうだ!確かペリドットから聞いたことが…」
勇太はペリドットがマーキュリーのスパイになった時に敵のアジトに侵入し、闇魔力核を入れられた者のリストを取ってきた話を思い出した。
「ペリドット様はかなり無理をして奥の方まで入られました。しかし、奥に進めば進むほど闇の力を感じたのです。おそらく敵のボスから発せられているものかと。」
「そうなんだ。オリーブ、ありがとう。」
「心を強く持ってください。これはペリドット様の発明品の1つです。」
オリーブは勇太にカプセルを3つ渡した。
「『超スタミナニンニク』を濃縮したカプセルです。ペリドット様はこちらに戻られてからずっとこれを作っておられました。魔力回復は魔ザクロに劣りますが、体力を回復する力は魔ザクロ以上だとおっしゃられていました。」
「ありがとう。ペリドットによろしく言っておいて。」
勇太は天守閣に向かって走って行った。
オリーブの言った通り、1室でオパールとクォーツがもめていた。