クォーツVSすず
「すず、見つけた。」
すずは敵の城の天守閣の屋根の上に立っていた。
真っ黒い着物で化粧も濃いすずは随分と雰囲気が変わってしまっていた。
クォーツも天守閣の屋根に飛んだ。
「この城を私1人で壊して良いって言われたの。」
すずはうれしそうに言った。
「そしたらもっとすごい特別な力を授けてくれるって。」
「すず、そんなことしてどうするんだ?新たな憎しみや怒りを生むだけだ。」
クォーツはさらにすずに近づいた。
「すず、今なら間に合う。こっちに来るんだ。」
クォーツはすずに手を差し出した。
「今の私はお師匠様の魔力もいっぱい持っているの。私は無敵なの!お師匠様、これが終わったらまた魔力ちょうだいね。」
すずはクォーツの話を聞いていないようだった。
すずは天守閣を冷たく見下ろし、手を上げた。
「壊れろー!」
すずの頭上に大きな魔法陣が現れた。
禍々しい魔力がこめられているのを感じたクォーツは身震いした。
魔法陣から無数の刀が流れ星の如くものすごいスピードで天守閣めがけて落ちていった。
クォーツは避けるために天守閣から離れた空中まで飛んだ。
天守閣の瓦や壁が次々に破壊され、
「何事だ?!」
と様子を見に城から出たきた家臣たちを次々と刺した。
「あはははは!」
すずは笑ってその様子を城から少し離れた空中で眺めていた。
「すず!止めろ!」
クォーツが叫んだが、すずには全く届いていなかった。
とうとう城が全壊した。
中から怪我をしながら逃げ出てきた人間にすずが目をつけた。
「止めろ!」
クォーツがすずに向かって魔力を放ち、攻撃した。
すずは空中でひょいとかわした。
「ひっどーい!あんなに愛し合ってたのに!」
すずはほほを膨らませた。
「だから俺はお前を止める!」
クォーツはすずに向かって飛んだ。
すずも闇魔力を帯びた攻撃を放ったが、クォーツの光属性の盾の魔法陣に呆気なく無力化された。
いくら闇の力を得たからと言っても、実践慣れをしていないのでクォーツの方に分があった。
すずが攻撃すればするほど、魔力を消耗するだけですずは不利になっていった。
とうとう魔力切れになり、すずは地面に降りた。
クォーツが光属性ですずに攻撃し、すずに命中した。
「きゃー!」
すずは倒れた。
「すず!」
クォーツも地面に降りて倒れたすずを抱き起こした。
「お師匠…様…ごめんなさい…」
すずはクォーツの攻撃を受けて正気に戻った。
厚化粧の下にいつものすずの無邪気な顔をクォーツは見た。
「すず、こんなことでしかお前を止められなかった。すまない。」
「お師匠様…謝らないで…私が悪いんだもん…」
すずの目から涙が溢れ、こぼれ落ちた。
「いっぱい人を殺しちゃった…」
「お前の本心ではなかったはずだ。」
すずがクォーツの前から姿を消す前に、すずは一瞬悲しそうな顔をしたのをクォーツは見逃していなかった。
自分に助けを求めているとクォーツはその時感じた。
「お師匠様、私の中の闇が殺せって言ってる…もう殺したくない…お師匠様を傷つけたくない…」
すずは胸を抑えて言った。
「大丈夫だ。俺がいるからお前を苦しめるようなことをさせない。絶対に。」
胸を抑えているすずの手をクォーツはぎゅっと強く握った。
「お師匠様、大好きって言ったのは本当だよ。」
すずは笑って言った。
クォーツはすずを強く抱きしめた。
「俺もだ。一緒に菓子を食べている時間が魔術のことも何もかも忘れてとても幸せだった。」
クォーツはすずを抱いたまま立ち上がった。
「すず、逃げよう。魔術界からも敵からも。2人で行こう。」
「ダメだよ。私にはこれがあるから。見つかっちゃう。」
すずは胸を指さした。
「俺がお前を守る。」
「でも…」
クォーツは隣の隣の国の廃屋にすずを連れて行った。
「今日はここで泊まろう。」
そう言って2人は横になった。
「お師匠様…ありがとう…私と一緒じゃお師匠様が不幸になっちゃう…闇が私を探している…すぐそこまで来てる。」
寝ついたクォーツの横ですずは立ち上がった。