クォーツの恋3
「お師匠様ぁ~!」
次の修業の時、すずは妙に明るかった。
クォーツにくっついてきたり、猫なで声で甘えてきたり、ボディタッチがやたら多かった。
着物もややはだけて胸元がチラチラ見えていた。
『どうしたんだ?』
クォーツも困惑していたが悪い気はしていなかった。
「お師匠様、私、お師匠様と修業じゃなくて…」
すずはいきなりクォーツに抱きついた。
「ねぇ、分かるでしょ?」
すずは上目遣いでクォーツを見た。
「うっ…」
クォーツもすずの様子が明らかにおかしいと思い、
「酒でも飲んだのか?熱でもあるのか?」
クォーツはすずの額に手を当てた。
「酔ってないわ。私、16よ。自分のことぐらい分かるわ。それより…」
すずは額に当てられたクォーツの手を自分の胸に当てた。
「お師匠様、ねっ?」
クォーツはすずが誘っているのだと気づいた。
「どうした、すず?今日はおかしい…」
「お師匠様、慰めて…悲しくておかしくなっちゃいそうなの。」
それを言われるとクォーツも何も言えなくなってしまった。
すずはクォーツに抱きついた。
「お師匠様…」
クォーツはすずを抱きしめ返した。
「すず…」
クォーツとすずは人間界のすずの部屋で抱き合って寝ていた。
すずは目を覚まし、クォーツを冷たく見下ろした。
「すごいよ…お師匠様の魔力…いっぱいもらっちゃった。お師匠様の心も私のもの。これで、あの方とこの世を壊しに行ける…」
クォーツも目を覚まし、起き上がろうとしたが力が入らなかった。
「すず、まさか…」
すずの体のまわりから黒いもやが吹き出していた。
「お師匠様、ありがとう。大好きだよ。」
すずは笑顔でクォーツの前から消えてしまった。
「しまった…すずは闇に堕ちてしまってたのか…」
冷静になっていれば気づいていたはずだった。
すずの誘惑に負けた自分をクォーツは情けなく感じていた。
「止めなければ…すず…」
クォーツはようやく立ち上がることができた。
弟を失った悲しみにすずはつけこまれた。
優しい心を持ったすずが、いつも明るい笑顔のすずがあんな冷たい顔をするなんてークォーツはショックだった。
「だからこそ、師匠である俺がすずを止めなければ…」
クォーツは自分の魔力や魔力核がほとんどすずに奪われて魔力がごくわずかしか残っていないのに気づいた。
「すずは俺の力を奪うために…でもあの時の悲しそうな表情は演技だろうか…本当は…」
クォーツは拳を強く握りしめた。
深呼吸したクォーツはその場で座禅を組んで瞑想した。
少しずつ魔力が戻ってきた。
「行くか。」
目を開けたクォーツは立ち上がった。




