クォーツの恋2
魔術界から戻ったすずは自分の街が変わり果てているのを見て愕然とした。
「すず!」
「お父!」
すずの父親がすずに駆け寄った。
「お前、どこ行ってたんだ?!みんな探してたんだぞ!」
「…私は…」
「お父、とにかくすずが無事で良かった。」
怒鳴っている父親から兄がすずをかばった。
「お兄…」
すずは涙が出ていた。
「すず、駿を見なかったか?」
「駿、いないの?」
すずは兄や父親と生き残った職人たちと駿を探しまわった。
「親方!いました…」
職人の1人が叫んだ。
すずたちは急いで向かったが、駿は焼け落ちた家屋の下敷きになって動かないでいた。
「駿!」
みなで駿を引っ張りあげたが、駿の体は冷たくなっていた。
「駿は…すずがいないのに気づいて探しに行ったんだ…『敵に拐われたのかもしれない。俺がお姉を助ける』って。」
兄が言った。
「駿…」
すずはわあわあと声をあげて泣いた。
自分がのんきに魔術界で遊んでいる間、駿は自分のことを必死で探していてくれた。そのせいで、駿はー。
「お師匠様、知ってたら何で…ちゃんと教えてくれなかったの…私だけ安全な場所にいたって大事な家族を亡くしても生きてる意味ないよ…」
すずは次の修業の時にクォーツに訴えた。
「…言ったはずだ。ご家族に街を出ろと。」
クォーツも辛かったがそう言うしかなかった。
「私、修業やめる。そのせいで駿は死んだんだもん!」
「お前のせいではない。弟が死んだのは戦のせいだ。」
「でも、でも…」
すずは泣きじゃくっていた。
すずは新しく移り住んだ家でひとりで泣いていた。
『お師匠様だって悪くないのに…私、ひどいこと言っちゃった…お師匠様に会えないのはいやだな…次の修業の時にちゃんと謝ろう…』
すずがそう思っていた時だった。
「かわいそうに。魔術に関わったせいで大切な弟を亡くしてしまって。」
突然、男の声が聞こえてすずは驚いて体が固まって動かないでいた。
「大丈夫。こちらに来ればお前の心は解放される。」
黒い着物を着て頭巾で顔を隠した男がいつの間にかすずの目の前に立っていた。
男はすずの胸に手を当てた。
「さぁ、恨め!この世を!魔術界を!」
すずは胸が氷のように冷たくなっているのを感じ、同時に駿を亡くした悲しみやクォーツへの恨みの感情が沸き上がってきた。
「違う!お師匠様は悪くない!お師匠様は私と私の家族を助けようとしてくれた!」
すずは両手で胸を抑えて前のめりになりながらも、闇魔力核の力に抵抗していた。
「なかなか強情な娘だ。」
男は今度はすずの耳元にそっとささやいた。
「お前は師匠が好きなんだな。欲しいんだろ?そいつの心が。早くしなければ他の女にとられてしまうかもな。魔術界には色っぽい女もいるんだぞ。」
すずはハッとして男を見た。心が乱されたすずに闇魔力核から出た黒い煙がすずを包み込んだ。
「うまくいけばアイツの1番弟子を潰すことができそうだな。」
男はそう言って消えた。