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8月の悲劇

暑い8月になった。

大学生はみな休みを旅行を楽しんだり、バイトしたりする時期で、勇太たち有機化学研究室もメンバーもどこかへ遊びに行こうと計画していた。

研究室で旅行会社のパンフレットをひろげ、みなで囲んでいた。

「やっぱり日帰りより泊まりが良い!」

樹理奈が言った。

「どこに?」

貴司が聞いた。

「うーん…ここは?海近いし。あっ、アウトレットもある!」

「おい!何でショッピングするんだよ!ここは?牧場でソフトクリーム食べるとかありじゃん!海も水族館も近いし、中華街もあるから食べ歩きもできる。」

海斗が指差して言った。

「良い!」

あきが言った。

「あきちゃん、泊まり大丈夫そう?」

樹理奈が聞いた。

「ダメって言われても頑張ってお母さんを説得するわ。」

あきがうれしそうに言った。


「僕、原田さんに頑張って告白して見ようと思うんだ。」

研究室の帰り道、勇太と駅に向かって歩いていた貴司が言った。

今日はあきは先に帰っていた。

「うん!頑張ってよ!」

最近、貴司と樹理奈は良く話をしているのを勇太は見ていた。

貴司から積極的に話しかけているだけでなく、樹理奈も貴司に勉強を教えてもらうためや雑談などで声をかけていて、勇太には良い雰囲気に見えていた。

貴司は海斗からもファッションのアドバイスを受けているようで、服装も流行のものを取り入れたりと意外と似合っていた。

「旅行の時に、思いきって言うつもりなんだ。」

「良いじゃん!協力するよ!」

研究室メンバーとの旅行はとても楽しみだった。


「部屋はもちろん女と一緒だろうな?」

カバンに荷物を詰め込んでいる勇太に晴明が聞いた。

いよいよ明日旅行だった。

「違うに決まってんじゃん!男女別だよ。」

「じゃあ夜這いするのに別の女が邪魔だな。」

晴明がパソコンの手を止めてニヤリと笑った。

「こういう時って女子同士で朝までガールズトークするもんだよ。」

「その可能性は高いな。」

勇太の言葉にペリドットが同意した。

「つまらん時代になったものだ。」

晴明が呆れたようにため息をついた。

『でも…あきと2人で旅行ってのも悪くないよな…卒業後に一緒に行けると良いな…』


旅行当日、レンタカーを借りて牧場に向かい、のんびり過ごした後、ホテルに向かった。

その夜、勇太はメールであきにホテルの外に呼び出された。

あきは浴衣姿だった。

『食事の時から思ってたけど…』

「浴衣、似合ってるよ。」

勇太が言った。

「ありがとう。」

あきがニッコリ笑った。

「さぁ、茶番は終わりだ。女王よ。」

その声に勇太は振り向くと黒いジャケットに黒の革のズボン、シルバーアクセサリーやチェーンをジャラジャラつけたいかにもチャラそうな男が立っていた。

「この感じ…」

背筋が凍るような冷たい感覚だったが、覚えがあった。

「まさか…闇!?」

勇太はあきの方を見た。あきはじっと男を見ていたが、勇太と違って驚いている様子ではなかった。

「あき、逃げるんだ。なんか、ヤバい感じがする…」

勇太はあきを庇おうとあきに背を向けた。

男はヘラヘラ笑いだした。

騎士(ナイト)気取りか?ただのガキが!女王よ。お迎えに上がりました。さぁ、我らの元へ…ってこれ言わなきゃコッパーのババアに怒られるからな。」

男はあきに手を差し出し、お辞儀した。

「女王?コッパー?…コッパーって…」

勇太は以前、モリオンが話してくれたことを思い出した。

(ゴールド)(シルバー)(コッパー)白金(プラチニウム)が敵のボスが認めた魔術師に与えられる力だ。今確認できてるのはシルバーとコッパーだけ。プラチニウムは不明…』

「じゃあ、やっぱり…」

目の前の男が金属中毒(メタルポイゾニング)であることは間違いなかった。

『このために、クォーツに鍛えられたんだ…』

勇太は攻撃しようと構えたその時だった。

ドンと背中を押された気がしたかと思うと、お腹から銀色の刃物のような鋭利な突起物が出ていた。その回りから赤い血がにじみ始めていた。

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