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おばあちゃんっ子

あきが小学生の時にあきの父親は交通事故で命を落とした。

そのことは勇太はあきからチラッと聞いていた。

「父親が死んでもあきは泣かなかった。ばあさんは心配していた。あきが無理しているのを分かったいた。娘はずっと仕事してあきに構えなかった。夫を失った悲しみを忘れようとしているように必死で働いてた。あきは…必死で泣くまいとしていた。」

勇太は真剣に話を聞いていた。

「飯の時間になってもあきが部屋から出てこなくなった日があった。ばあさんは握り飯を作ってあきの部屋に持っていった。そして、あの子に言った。『泣きたかったらいっぱい泣いていい。でも、明日からはいっぱい笑うように』と。そしたらあきは…今まで我慢していた分を吐き出すかのようにわあわあ泣き出した。」

あきの祖父はお酒をチビチビ飲みながら話していた。たまに勇太のお猪口にもお酒を注いだ。

「あきはばあさんっ子だった。ばあさんも孫のあきを大層かわいがっていた。なんせ、わしらにとってたった1人の孫だったんでな。あきが少しずつ笑うようになってばあさんもうれしそうにしていた。塾で仲の良い友達もできてわしらも一安心だった。その友達も事故で…かわいそうに…」

“その友達”とは仲の良かった山口沙耶香のことだと勇太は分かった。

あきの祖父は部屋の外を指差した。

「あの仏壇の写真がばあさんだ。ばあさんはあきが中学入った後に死んだか…あきの中学合格には大層喜んどった。成績もトップで自分の孫とは思えないって笑っとった。でも、あの時はばあさんはすでに末期のガンだった…あきが一時、医者を目指しとったのは父親が医者だったのもあっただろうが、ばあさんのガンを治したかったのが大きかったのだろうな。ばあさんは自分の死期を悟って、『あきの嫁入り姿が見たかった』って悲しそうに言ってたな…」

あきの祖父は視線を落とした。

「さっき…遺影がチラッと見えて…やっぱりおばあさんだったんですね。すごくきれいな人だったんですね。」

あきの祖父が少し悲しそうな顔になったので少しでも元気づけようと勇太が口を開いた。

穏やかな優しい笑顔が印象的で目元があきとよく似ている印象だった。

「きれいか…」

あきの祖父が顔をあげて勇太をまっすぐ見た。

「あぁ見えて昔はヒドイ顔だった。双子の妹と影でよく比べられててな。わしはばあさんらとは幼なじみでよく知る仲だったが、幼い頃は見分けもつかんぐらいそっくりなベッピン双子姉妹で有名だった。10歳を過ぎた頃…2人ははっきり見分けがつくようになった。」

あきの祖父は一呼吸置いてまた話始めた。

「ばあさんの顔が赤くブツブツの出来物が増えてヒドイ顔になった。対照的に双子の妹は前にも増してキレイな顔になっていったように見えたな。男は皆振り向くぐらいに。ばあさんも肌に良いものは色々試したようだが、良くなるところかますますひどくなっていってな…」

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