病院実習
薬局実習と違って病院実習は4週間で複数人数で、貴司と賢二も含めて10人の学生と一緒だった。
基本、この4週間は午前中は調剤室で病棟の患者の調剤だった。
「眠いー。昨日久々に彼氏にあってさー。」
「真面目にやってくれ。さっきもミスしてたし。10人全員の連帯責任になるんだ。」
真剣に業務をしようとしない女子に賢二が言った。
「大林とかもいるんだからあいつらにやらせたら良いのよ!」
その女子が影でそんなことを言っているのを勇太は聞いた。
態度の悪い女子はその後も態度を改めなかった。
グループワークで共同発表の準備をしているときも、
「だっるっ!大林やっといてよ!」
「何で大林なんだよ!自分でやれ!」
賢二が注意しても知らんぷりだった。
「何であの人、あんなにやる気ないんだろ?」
帰り道、勇太が言った。貴司と例の女子を含む5人は先に帰っていた。
勇太は病院志望で、特に今実習している七里中央病院に就職を考えているので、薬局実習のとき以上にかなり真剣に業務に取り組んでいた。
そのため、1人でもやる気がない者がいると勇太だけでなく他の学生の足を引っ張ることになるので、さすがの勇太も迷惑に感じていた。
「卒業したら年上の彼氏と結婚するとか言ってた。服も時計もブランドで彼氏に買ってもらったって自慢してた。でも、卒業できるの?…だって卒業試験受かるか分からないんだし。それに彼氏とそれまで続いている保証ないし。」
他の女子たちも言った。
「ほんと!迷惑なのよ!南君、いつも注意してくれてありがとう。更衣室で文句ばっかり言ってるわ。でも、私ももう我慢の限界よ!昨日から無視してる。」
「留年して彼氏に捨てられたら良いのに!」
「休憩中もずっと彼氏にメールしてるし。彼氏も仕事中でしょ?」
「今の彼氏、金持ちなんだって!だから必死なのよ。」
「遊ばれてるだけな気がしてきた。」
「他にも女がいるんじゃない?実は既婚者だったとか?」
「もって後、半年かな?」
女子たちの会話に、
『女って怖い…』
と勇太は思っていた。
「実習終わったらさ、打ち上げしようぜ。」
賢二が言った。
「賛成!もちろん9人で!」
「後、3週間頑張ろ!」
「他の子たちにも言っておくね。」
女子たちがキャッキャッはしゃぎだした。
「中島、今日飯一緒に食わないか?」
賢二がこそっと勇太に言った。
「うん。良いよ。」
賢二と2人でご飯を食べに行くのは久しぶりだった。
他の女子たちと別れて勇太と賢二は居酒屋へ入っていった。