研究スタート
3人は屋上を後にした。
講義室に戻るまでほとんど口を開かなかった。
「じゃあ、また研究室で。」
トイレの前で貴司と別れた。
勇太と海斗は一緒に講義室に入って3限目の講義が始まるまで他愛もない話をしていた。
4限目の講義が終わって鞄に荷物をまとめていると樹理奈が近づいてきた。
「ねえ、お昼休みに野上さんの所に行ってたの?」
「あっ、うん。そうだけど。」
勇太は誘わなかったのやっぱり悪かったかなと思いながら答えた。
「私にも声かけてよ!」
樹理奈が詰め寄ってきた。
「取り巻き多くてめんどくさかった。」
海斗がストレートに言った。樹理奈が少しふてくされた顔をした。
「じゃあ、今度からケータイで連絡して。アドレス教えてくれる?」
3人は携帯電話のアドレスを交換した。勇太はドキドキしているのを隠すのに必死だった。
「大林君と野上さんのも聞いとこ。じゃあ、後でね。あっ、野上さんに聞いたこと後でメールして。」
そう言って樹理奈は講義室を出ていった。
「なぁ、勇太。まさか原田に惚れてないだろな?」
海斗がニヤっとしながら聞いた。
「そんな…好きとかじゃないよ。ただ…テレビで観てたし、普通にかわいいじゃん、いまだに緊張するというか…」
勇太の言葉に海斗がニヤニヤしながら、
「やっぱりそんなことだろうと思った。好きになったら1番に教えてくれよ。」
「ならないよ。」
勇太もニヤっとして言った。
『原田さんと海斗なら美男美女でお似合いなのに。今後、研究室内で何かあるかな?』
2人は講義室を出て別校舎にある研究室へ向かった。
もうすでにあき、貴司、樹理奈が来ていた。
助手に研究室内を案内され、器具や装置、試薬、薬品などの説明を受けた。
そして、研究ノート用の大学ノートを渡され、実験を始めた。みな黙って黙々と装置に向かっていた。
「早くて3カ月くらいで1つの研究が終わるかも。5月から実務実習もあるし、そろそろ早い人は就活はじめるし、再来年は国家試験もあるでしょ?ウチはさっさと研究を終わらせて国家試験勉強をみっちりしてもらうスタイルでいくわ。この研究室で合格率100%目指すわよ。あっ、でも今は研究をみっちり頑張ってね。」
助手が言った。
研究の反応待ちの間、勇太は研究ノートに記録していると、
「意外だったな。」
と海斗に声をかけられた。
「ここの教授、先月までアメリカで研究してたって聞いたから国家試験直前まで研究漬けだと思ってたのに。器具とかも新品だし、スゴいな。」
「理事長のご厚意でね。薬学部は新設だし、あなたたちの次の学年は6年制の子たちだから気合い入ってらっしゃるのよ。」
いつの間にか2人の後ろに立ってた助手が教えてくれた。
午前は魔術修行と午後は研究という2重生活がいよいよ始まるのか…勇太はそう思いながら反応の確認をして、研究を続けた。