オリーブ
光がおさまると勇太は見たことのない場所に立っていた。
木でできた古い机の上に大きさの違う鉄アレイが5つ置かれていて、アロエや観葉植物が鉢に青々と育っていた。机の端にはこの場所に似合わない小さなウサギの人形があった。
勇太はこの鉄アレイとウサギに見覚えがあった。
「まさか、ここって…」
勇太はペンダントを手にとって、じっとペリドットの宝石核を見た。
「ペリドットの空間…だよね?」
「あぁ、そうだ。」
ペリドットはいつの間にか勇太の前に立っていた。
「ペリドット様、お帰りなさいませ。」
先ほどの女がお辞儀した。
「オリーブ、久しぶりだな。」
オリーブと呼ばれた女はうれしそうに笑顔を見せた。
「俺の…式神だ。」
ペリドットは言った。
晴明は勇太の横でニヤニヤしていた。
「ずっと、お待ちしておりました。私を探している者がいたのですが、ずっと隠れていました。先ほど、強大な魔力の中にあなた様の魔力があるのを感じました。戻ってきてくださったのですね。」
オリーブはペリドットに言った。
勇太はオリーブの顔を見て、
『この人、どっかで見たことが…』
とずっと考えていた。
「あっ!」
勇太の頭の中がようやくスッキリした。
「分かった!文子先生に似てるんだ!ってことは…この人、式神って言ってたけど、モデルの人は…」
ペリドットは顔を真っ赤にした。
「お文だ…」
「主、なかなか鋭いな。」
晴明は知っていたようだった。
助手とお文は腹違いの姉妹なので似ていても不思議ではなかった。
「とっ、ところで、お前を探してたヤツって?」
ペリドットはまだ少し動揺しながらオリーブに聞いた。
「オパール様、ターコイズ様、そしてあなた様のもう片方の宝石核を持ったクォーツ様。この空間に入ろうとしていたようです。」
「クォーツが?何で?」
勇太も聞いた。
「クォーツ、さすがだ。恐らくこれを…あれ…?」
ペリドットは机の引き出しから真っ白な紙を取り出した。
「闇魔力核のリストが…消えてしまっている。俺が持ち出したときには書かれていたのに…」
「呪いが施されていたのであろう。」
晴明が言った。
晴明曰く、魔術界に入るとリストの文字が消滅してしまうという術がリストに施されていたとのことだった。
「晴明殿の力でリストを元に戻すことは…俺、内容ほとんど覚えてなくて…」
「ふーむ。」
晴明は腕を組んでいた。
「オパール、オリーブが現れたがまた見失って…」
海斗と樹理奈を魔術界の地属性の建物の中に案内しようとしたオパールにターコイズがこそっと言った。
「あの女、なかなか捕まらないな…」
「それが、勇太と一緒にいたんだ。」
オパールが驚いた顔をした。
「勇太がどうした?」
海斗が聞いた。
「さぁな。何でもない。」
オパールがしらを切った。
「そういえば、中島君、さっきから見ないよね。野上さんが探してたのに。大林君はモリオンと一緒だろうけど。」
樹理奈が言った。