初デート
「ダイヤ、こんなもんで良いか?」
勇太たちは『扉の空間』で擬似・闇魔力核からの攻撃を防いだり、攻撃したりと実戦修行をモリオンの指導の元で行っていた。
教授と助手がその様子を見ていた。
「5人全員をjewelsとして迎えよう。」
教授が言った。
「もうすぐGWだからその時に『光と闇の空間』で宝石核を渡そうと思う。1日空けておいてくれ。」
「Jewelsになってもこれまでの生活をおくれるんですよね?」
貴司が聞いた。
「もちろん。正式に魔術界との出入りも許されるし、魔術界で自分の空間を持つこともできる。jewelsの特権は後で文子に説明してもらうから。今日は解散だ。」
学生生活最後のGWは勇太にとって魔術界のことよりももっと大切なことが待っていた。
「勇太、楽しんで来いよ!」
GW初日の朝、部屋を出る勇太にペリドットは笑顔で手を振った。
「ありがとう。行ってくる。」
あきとの初デートだ。
「あっ、もう来てる…」
待ち合わせ場所にもうあきが立っていた。
あきは勇太に気づき、笑顔で手を振った。
「ゴメン、あき。待った?」
「ううん。早く着きすぎちゃった。」
2人は手を繋いで歩き出した。
勇太には2人だけの時間が流れているように感じていた。
海斗に教えてもらったイタリアン料理店でパスタを食べた後、ショッピングモールでペアリングを買った。
勇太はベンチに座ってあきの左薬指にリングをはめてあげた。
「ありがとう。」
あきは指にはめたリングをかざしてうれしそうに眺めていた。
「シンプルなのでゴメン。」
勇太が買ったのは何もデザインされていないシンプルなただのリングだった。デザインがおしゃれなものは勇太のお小遣いでは高くて買えなかったのだ。それを察してか、あきもシンプルなもので満足してくれていた。
「ううん。うれしいから。」
あきは笑顔だった。
勇太が自分のリングを指にはめようとした時、
「待って。」
あきが勇太のリングを手にとって、内側を指で1回こすった。
「監視されているからこれぐらいしかできないけど。」
あきは勇太にリングを渡した。
勇太はリングの内側を覗いた。
“A to Y♡”
と彫られていた。
勇太は驚いてあきを見た。
「ちょっとなら金属も使えるの。でもやりすぎるとバレちゃうから。」
「だから、刻印してもらうの断ってたのか。あきの金属の力は何か分かったの?」
「このリングはシルバーだけど、私の力はシルバーじゃないと思う。」
少し気まずい空気が流れた気がしたので、
「今日は魔術の話はなしにしよう…そうだ!まだ早いけど夜はどこに行こうか?何食べたい?」
と勇太が切り替えた。海斗や彬からディナー候補の店をいくつか教えてもらっていた。
「んーと…」
あきは勇太の手を握った。
「中島君が食べたいものが良いな!」
「えっ、俺が食べたいもの…?」
勇太は驚いたが、
「決まりね。」
あきはにかっと笑った。
その笑顔がかわいく、いとおしく思えたので勇太はあきに衝動的にキスをした。