黒森先生の勉強会
実習が始まる前まで週に1回、黒森先生ことモリオンからの勉強会があった。
はじめは研究室としての有機化学の勉強、その次は『扉の空間』に行って擬似・闇魔力核を使った、対 金属中毒を想定した修行だった。
「これが擬似・闇魔術核だ。」
モリオンの手に手のひらよりもひとまわり大きい灰色の球体を勇太たちに見せた。
「本物は最も黒く、中には金属核と呼ばれる金属が入っている。」
モリオンはあきをチラッと見て言った。
「闇魔力核に有効なのは光属性魔術とROOKなのは知ってるな?でも、向こうにも分かっていることだ。ROOKの弱点は多くの魔法陣からなるからかなりの手練れでないと外してしまう可能性が高い。お前たちの術の精度を上げ、ひとりひとりが敵に対抗できるようにレベルアップをするために個別指導をしろだと。」
モリオンはひとりひとりを指差した。
「勇太は月曜日、海斗は水曜日、樹理奈は金曜日、貴司はそれ以外いつでも勝手に来い。勉強会の後は合同でやる。」
モリオンはあきを指差した。
「あきはラピス会いに行けだと。じゃあ、とりあえずはじめるか。この1ヵ月でjewelsになるつもりで、だと。」
こうして、モリオンによる集中修行が始まった。
「モリオンって意外と教えるの上手いんだよ。」
帰り道、勇太はあきに話した。
「そういえば、ラピスさん所に行ったの?」
「うん。闇魔力核のことでね。心配してたって。」
あきとラピスラズリは以前から仲が良いようだった。
「あのさ、あき…」
周りには誰も歩いていなかった。
勇太は少し前から気持ちが落ち着かないでいた。
「ん?何?」
あきがこちらを向いた瞬間、勇太はあきの唇にキスをした。
『よしっ!上手くいった!』
勇太は心の中でガッツポーズをした。
あきは驚いて顔が赤くなっていた。
彬に教わった方法でキスが成功して勇太は満足だったが、ずっとドキドキしぱなしだった。
その後、2人は無言のまま駅まで歩いて行った。
「このままで良いのですか?」
教授室でクォーツが教授に詰め寄った。クォーツの後ろには助手とアメジストもいた。
「中島君には晴明がついているから…」
「師匠が晴明様の力を信頼しているのは分かっています。しかし、あきは闇を有しています。金属も何かは不明なまま。敵に知られるのも時間の問題です。このまま野放しにしておくのは…」
「私も何か対策を必要かと思います。」
助手も言った。
「敵に通じているのは誰かまだ分からないのです。あの子のこと、敵に漏れてるかもしれません。魔術界で保護すべきでは?」
「だから中島君と野上さんの交際は喜ばしいことなんだ。晴明の目が野上さんにも向くんだ。ジルコニアも式神もあの子に監視させてるし。文子、帰ろうか。クォーツもアメジストも気をつけて。」
教授はカバンを持って教授室に出た。