封印・解
勇太が目をつぶると目の前にあきが立っている光景が見えた。
『野上さん…』
あきは悲しそうな顔をしていた。
「幻滅した?」
あきが聞いてきた。
「ずっと黙ってた。闇魔力核が発動するのを抑えるのに必死だった。でもどんどん闇魔力があふれでてくるのが分かってた。」
『幻滅してないよ。だって、何で幻滅する必要があるの?』
勇太は声に出さず、心の中であきに呼びかけた。
『みんな心配してる。だから戻ってきてよ。』
クォーツが本当にあきを拘束して拷問するかもしれないと勇太は思った。
『闇魔力核があってもなくても野上さんは野上さんだから。それに野上さんは俺たちには教えてくれたじゃない。だから…戻ってきてよ。』
あきはじっと勇太を見た。
「封印は晴明の攻撃で壊れそうになった…でも、まだ感情を抑えることで何とかなってたの…昨日、中島君が私に…」
あきが顔を赤くした。
勇太の告白があきの押さえつけていた感情を乱してしまったのだった。
勇太もそれに気づいて顔を赤くした。
『あのっ…ゴメン…勢いで言ってしまって…』
「…うれしかった。」
あきは涙目になっていた。
「こんな私のこと。好きになってくれて。でも、もう中島君を巻き込みたくなかった…」
勇太はあきに近づいてあきの頭をそっと撫でた。
『もう、1人で何もかも背負わないでよ…俺たちがいるじゃない。』
あきは顔を上げて勇太の顔をじっと見た。
「ありがとう。」
笑顔になったあきの目から涙がこぼれると同時に光りに包まれた。
勇太は目を開けた。
クォーツとjewelsたちがあきをどう拘束するかでまだ揉めていた。
「クォーツ、しばらく様子を見よう。」
教授がそう提案したが、クォーツは納得がいかない様子だった。
「焦ることはない。」
晴明はクォーツの肩にポンと手を置いた。そして、チラッと勇太を見て、いつもの様にニヤリと笑った。
あきの闇属性魔力を抑えていた『紅色封印術』の玉が突然一斉に割れた。
みな驚いてあきの方を見た。
闇属性魔力が消えてそこにあきが立っていた。
みな驚いて体が固まっていたが、
「野上さん!」
樹理奈があきに抱きついた。
「良かった…無事で…」
樹理奈は泣いていた。
「樹理奈!離れて!危険よ!」
エメラルドが叫んだが、樹理奈はあきに抱きついたまま泣いていた。
「大丈夫だ。危険はないだろう。」
晴明が言った。
晴明のあまりにも余裕の顔に、勇太はこうなることを全て見通していたのかと思った。
「ゴメンね…隠してて。大丈夫だから。」
あきが樹理奈を見て、ニコリと笑った。
「野上さん…」
初めて笑いかけてくれたのがうれしかったので樹理奈はまた泣いた。
勇太もあきが前より表情が生き生きしているように見えた。
『戻ってきてくれたんだ。』
勇太も素直にうれしかった。
貴司も海斗もうれしそうだった。
「晴明、お前には全てお見通しだったというわけか。」
教授が言った。
「あの子は闇魔力核を入れられも、発動を自力で抑えていた。5年という年月を経て闇魔力核の力をコントロールできるようになったと。」
晴明は教授を見てニヤリと笑った。