闇の中の真実
「だから、そのうち戻って来るから。」
「離してください、晴明様。闇属性を受け入れた理由があるなら俺の目で知りたい…」
「おっ、戻ってきたな。」
勇太たち4人はもといた『扉の空間』に戻ってきた。
4人の目の前に身を乗り出しているクォーツと手を広げてクォーツがこちらに来ないように制止している晴明がいた。
「勇太!何を見た!すべて話せ!」
晴明の制止を振り切ってクォーツが勇太に詰め寄った。
勇太は黙っていた。
ガーネットとの別れの光景を見た後、ルビーやサファイアからガーネットの行方を詰問され、敵のマーキュリーからもガーネットの行方を聞かれているあきの姿を見た。
扉が開いて勇太たちが初めて『扉の空間』にtwelvesによって召喚された光景が現れて、『私のせいで巻き込んでしまってごめんなさい。』というあきの声が聞こえた。
最期は勇太が拉致された時の記憶だった。勇太に憑依した晴明があきに攻撃したとき、あきからピキっとなにか割れるような音が聞こえた。
勇太たちはあきの記憶の中で見たことを頭の中で整理していた。
『闇魔力核を封じた時に感情も封じてしまって…だから野上さんは表情を失った…友達が死んだ後だったから誰も違和感を感じなかった…大学に入ってもずっと1人だったのは…関わりを持つのが怖かったから…魔力も闇属性魔力も有していたから…』
「勇太!黙ってないで…」
「落ーちー着ーけっての。」
アメジストとジルコンも現れた。
「ほら、大也も来たな。」
晴明の目線の先に教授と助手も立っていた。
「師匠…」
教授の姿を見て、クォーツは大人しくなった。
「まず、状況を時系列ごとに説明してくれ。」
教授が言った。
「あきが突然胸を押さえて苦しみだして…」
サファイアが説明した。
「ふむ。」
教授はあきが眠っている球体に手を当てた。
「闇属性に間違いない。」
教授の言葉に晴明が鼻で笑った。
「とうに気づいていたくせに。」
「師匠…」
教授が息を吐いた。
「晴明、お前もあえて黙っていただろ。」
晴明はニヤリと笑った。
「この『紅色封印術』は見事だ。何十…いや何百回と重ねたもの。恐らくこの5年の間に我々の監視を欺きながら定期的に補強していたのだろう。ただ、あるきっかけで一部欠けたことで…」
教授は晴明を見た。
勇太ははっと気づいた。
自分に晴明が憑依した時に晴明の攻撃が『紅色封印術』の一部を壊したのだった。
「どうしますか?野上あきを。」
ようやく冷静になったクォーツが教授に聞いた。
「この封印を解かなければ何もできないな。下手にこじ開けると闇属性魔力があふれでてくるぞ。」
モリオンが言った。
「光属性を集めて、封印をこじ開けた後拘束するか。」
クォーツが言った。
「拘束って…」
樹理奈がクォーツの言ったことが信じられない顔で言った。
「スパイだった可能性もある。どちらにせよ、5年ほど闇魔力核を持っていることを黙っていたんだ。拷問する必要がある。」
「ちょっと、拷問って…野上さんはスパイじゃないよ!」
貴司も必死でクォーツに訴えた。
「どんな記憶を見てきたのかは知らんが、お前たちを味方につけるために自分の都合の良いような記憶に変えてお前たちに見せたのかもしれないんだ。」
クォーツが冷たく言いはなった。
『主よ。』
勇太の頭の中で晴明の声がした。
『蛍にはまだ女の魔力がわずかに残っている。』
勇太は自分の手の甲に止まっている魔力蛍を見た。
さっきよりかなり小さな光になっていた。
魔力蛍は勇太の手のひらの中に移動した。
勇太はそれを優しく握りしめて目をつぶった。