扉の空間
「あの…魔力核ってどこにできるの?」
貴司が聞いた。
「細胞の中よ。そうそう、あなたたち午後は忙しいみたいだから明日以降もこの時間に呼ばせてもらうわ。」
ルビーが答えた。
「2限目の授業もあるんだけど…」
貴司はすかさず言った。確かにいつも2限目に5人もいなくなるとなると他の学生が不信に思うのは想像がつく。それに卒業単位にも響いてきそうだ。
「この空間は昨日扉を開けた時にお前たちを呼んだ空間だ。『扉の空間』と言って扉を開けることができる基本twelvesと呼ばれた者たち、つまりお前たちしか入ることができない、しかも時間を止めているから何時間いようが元の世界に戻ってもこちらに来た時と同じ時間に戻ることになるからそちらの生活に支障はきたさないはずだ。」
サファイアが言った。みな“『基本』twelves”と言った理由は昨日のアメジストの話で分かっていた。クォーツとロードという魔術師が欠員補充で扉を開けたからだ。
そういえば昨日、元の世界に戻ってきた時、教授も助手も自分たちに対して全く違和感を感じていなかったようだった。勇太はようやく合点がいったように感じた。
「ルビー、もう戻っていい?ちょっと気になることがあるのよ。」
「ええ、ありがとう、エメラルド。」
そう言ってエメラルドは消えていった。続けてルビーが、
「明日からはそれぞれ師匠についてもらって修行してもらうわ。じゃあ、またね。」
と言い終わったと同時に指を鳴らした。
勇太たちは元いた講義室の席に座っていた。
『まだ、分からないことだらけなのに…野上さんに聞くしかないか…』
勇太はそう思いため息をついた。
2限目が終わり、海斗と2人でお弁当を買いに行った。
2人とも無言だったが、講義室に戻るときエレベーターに誰も乗っていなかったので、やっと口を開くことができた。
「なあ、海斗。俺分からないことだらけでなんか向こうのペースについていけないんだけど。」
「俺も。頭の中ごちゃごちゃのまま進んでいるよな。」
「野上さんに聞こうかな…でもいつも休みの時間いないんだよな。」
「1人で屋上にいる…のを見たことがある。」
「じゃあ後で聞きに行かないか?大林君と原田さんも誘って。」
「いや、原田の取り巻きがついてきたら面倒だ。2人で行こう。」
「分かった。」
ちょうどエレベーターは5階についてドアが開いた。
2人はまた黙って降りて講義室に向かって行った。