失恋後
「勇太、おかえり。」
夜、帰宅した勇太を部屋でペリドットと晴明が待ち構えていた。
「…ただいま。」
勇太は今日、あきに振られたことをこの2人にバレていることは分かっていたので、気が重かった。
「漢になったな。」
晴明が勇太に言った。
「全然だよ。振られたし。」
勇太はため息をついた。
「後悔しているのか。」
晴明が聞いた。
「そら、まぁ、もっと野上さんと話に行ったり、アプローチしに行くべきだったなって思ってる。」
勇太は椅子に腰かけた。
「でも、お前の気持ちをあきは知ってしまったんだ。それも大きなアプローチじゃないか?」
ペリドットが言った。
「うん…でも、突然あんなこと言われて迷惑じゃなかったのかなって…」
「押し倒せば良かったのでは?」
晴明がニヤニヤしながら言った。
「押し倒すって…今は犯罪なんだよ。」
勇太が少し呆れながら言った。
「でも、押し倒すまではいかなくても色々アプローチしていかなきゃらいけないよな。」
勇太が言った。
「諦めたわけじゃないんだな。」
ペリドットが言った。
「うーん。よく分からないけど…まだ気持ちは変わってない…かな?」
ペリドットは勇太の肩にポンと手を置いた。
「そうか!俺は応援しているからな!」
「ありがとう。風呂入ってくる。」
そう言って勇太は部屋を出て1階へ降りて行った。
『気持ちを切り換えなきゃ。クォーツにも『今日はいつも以上に集中できてない』なんて言われてしまったし。』
「晴明殿。勇太を利用して何を画策しているのですか?」
ペリドットが晴明に聞いた。晴明は目を丸くしていた。
「俺を勇太の元に置いているのも訳があったんでしょう?」
晴明はニヤリと笑った。
「おはよう。」
次の日、勇太はいつもよりも早く研究室に入った。
もうすでにあきが来ていた。
「おはよう。」
あきは勇太をチラッと見てあいさつした。
『気を使われてしまってるな…』
勇太はそう思ったが、
「野上さん、俺がゴミ出しとくよ。」
とゴミ箱のゴミを袋に入れていたあきに声をかけた。
あきは勇太を見て少し驚いた顔をした。
「いつもやってくれてるから今日は俺がするよ。」
そう言って勇太はあきに代わって研究室内のゴミ箱のゴミを集めだした。
「ありがとう。」
背中越しにあきの声が聞こえ、勇太はうれしくて少し気が楽になった。
「勇太、早いな。」
海斗も研究室に入ってきた。
校舎の外のゴミ捨て場に集めたゴミを持っていった後、3人で談笑した。
『野上さんって1人子なんだ。おじいさんの家に住んでいるって…』
話をすればするほど、あきのことを知ることができた。
「今日は調子は良いんだろうな?昨日の遅れを取り戻すためにも集中してやるぞ。」
『扉の空間』での修行でクォーツが言った。
「まず、昨日出来損なった…」
クォーツが言いかけていた時だった。
ズーンと地鳴りのような音が空間に響き、体を押し潰されるような冷たく大きな圧力を感じた。
「この感覚…」
先日、同じ感覚を体験していた。繁華街で罠から闇属性魔術が溢れだした時と同じ感覚だった。
「闇…なぜここで?」
クォーツも辺りを見回した。
そして、クォーツが走り出したので勇太も後を追った。