魔力核(コア)
あきは黙ったままだった。
「あなたも観念してほしいわ。逃げれないの分かっているでしょ?」
ルビーは少し強めの口調であきに言った。サファイアは黙ってあきを見つめていた。
あきは、「分かった。」と言って頷いた。
ルビーは安心した顔になり、勇太たちを見回した。
「まず、魔術を使うには発動させるためのエネルギー、つまり魔力がなくてはだめなの。あなたたちが生きていく上で必要な体内のクエン酸回路で生成されるエネルギーを魔力に変換するための『魔力核』を作るわね。」
ルビーが説明していると、
「お待たせ。」
という声が聞こえ、男女2人が現れた。
「エメラルドとクォーツよ。私たち4人で魔力核を生成するわ。」
そう言うとルビーは貴司の前に、サファイアは海斗に、エメラルドは樹理奈に、クォーツは勇太の前に立った。
『この人、昨日仕切ってた人だよな。仕切ってたけど扉を開けれるtwelvesじゃないってアメジストが言ってて、ダイヤとかいうボスのこと師匠って呼んでた。確か、アメジストもダイヤが師匠だって…』
勇太はクォーツの顔を見ながらそう考えているとギロっと睨まれ、慌てて目をそらしてしまった。
「じゃあ始めるわ。あき、4人同時にするから魔法陣で繋いでくれる?」
ルビーがそう言い終わると同時に勇太たちの足を囲う様にそれぞれ円が現れて4人の足下の円は線で繋がった。
魔術を自分の目で見たのがこれが初めてだった。
勇太は驚いた表情を隠せないでいると、
「シンクロ率も上げれるようにしておいてくれ。」
と、クォーツがあきに言った。足下の円と線が倍の太さになった。
魔術師たちはそれぞれ前に立っているメンバーの胸に手を当てた。温かい何かが体全体を覆っている感覚だった。
1分ほど経ったら魔術師たちは手を離し、足下の魔法陣も消えた。
みな顔を見合せた。特に体は何も変わっていない。
「これで魔術師見習いになったわよ。」
勇太は自分の手のひらを見つめて閉じたり開いたりした。魔力らしいものは感じない、というか分からない。他のメンバーも呆然と立ったままだった。
「今日はこれで終わりね。魔力核が体に馴染むのは一晩寝てからなのよ。本格的な修行は明日からになるわ。あきもありがとうね。さすがね、あなたのお陰ですぐに済んだわ。」
ルビーがあきに微笑んだ。サファイアはあきの肩をポンと叩いた。
『一晩寝てから…って料理なんかみたいだな。』
海斗がボソッと勇太に言った。勇太はにやけながら頷いた。