突然の奇襲
「だからみんな宝石の名前なのね。」
貴司の話を聞いた樹理奈が言った。
「モリオンに見せてって頼んだけどダメだったよ。宝石核は最大の武器だけど、魔力核があるから体のどこにあるかは他言無用だって。宝石核が敵に知られて乗っ取られでもしたら…」
そう言いかけた貴司は勇太を見てハッとして黙ってしまった。
「えっ、何?!」
樹理奈はなぜ貴司が黙ってしまったのか理解できないでいた。
「敵に宝石核を乗っ取られてしまうということは敵の意のままに操られてしまうということ。ペリドットがそうだったように。」
あきが平然と言った。
樹理奈は貴司が黙った理由が理解できたので、複雑な顔をした。海斗も心配そうに勇太を見た。
「あっ、大丈夫だよ。晴明に聞いたから。」
勇太は本当はペリドット本人から聞いていたことだったが、ペリドットが“半”式神状態で勇太の部屋にいることを話すことになってしまうので、晴明から聞いたという嘘をついた。
『みんな気を使ってくれていたんだな…』
ペリドットのことで勇太が辛い思いを抱え続けているとみな感じていたが、
『家にいるって言ったら安心してくれるだろうけど…言えないしな…』
と勇太は複雑な思いを抱えていた。
「じゃあ…あの時に落ちてたのって、ペリドットの宝石核だったのね。」
樹理奈が言った。
「Jewelsになるのもリスクがあるってことなんだな。」
海斗も言った。
「なぁ、バレンタインのお返し、何か考えてるか?」
午後、たまたまトイレに居合わせた貴司に海斗が言った。
「何にも…松下君に相談しようとは思ってたんだ。」
貴司が言った。
「今度の日曜日に3人で買いに行こうぜ。ついでにパーっとボウリングで気分転換でもして。」
「良いね!中島君、少しは気が楽になってくれればいいんだけど。」
そう話ながら2人はトイレを出た後、校舎の外の自販機に向かった。
「ん?!何だろう?」
自販機でジュースを買おうとした貴司は後ろを振り返った。
「どうした?」
海斗も後ろを振り返ると、黒の革のジャケットに黒の革のズボンを履いたパンクバンド風のガタイの良い男が立っていた。
「あっ!」
貴司と海斗はおもわず声をあげた。
「覚えていてくれたとは光栄だな。」
男は2人を見下しながらニヤリと笑った。
「マンガニーズ…」
「しかし、せっかく俺のことを覚えていたのにすぐに死ぬことになるなんて残念だな。」
マンガニーズの言葉に貴司と海斗は身構えた。
「大林、人払いを…」
「うん、やってるよ…松下君、僕たち2人で…」
「あぁ、やるしかなさそうだな。」




