勇太の意志
「それでも、あなたは魔術修行を続ける?」
パールが突然勇太に話題をふってきたので勇太はビックリした。
「『友達も続けてるから』って理由じゃ通らないわよ。」
パールの顔は真剣だった。
「…俺、守りたい人がいるんだ…だから…修行して、俺が守れるようになりたい。だから、俺は…」
勇太はあきの顔を思い出しながら言った。
「今度こそ、守りたい!俺が守りたいんだ!」
勇太はペリドットがクォーツに処分される時の最期の顔を思い出した。
『もう、あんな思いしたくないんだ…父さんも母さんも巻き込みたくない…それに、今度は俺が野上さんを守りたい…男としても…』
「1つ、聞いていい?」
パールが言った。
「ペリドットの敵討ちは考えていないわよね?」
正直、勇太は金属中毒に対して敵討ちを考えていないわけでもなかったが、ペリドットは“半”式神として勇太の部屋にいるし、
「ペリドットは敵討ちなんか望んでないと思うんだ。」
と言った。
「それを聞いて少し安心したわ。」
パールが勇太に微笑んだ。
「明日から修行を再開したら良いわ。またクォーツにお願いしておくわ。」
「あの、今度はどんな修行になるのですか?」
勇太はまたクォーツと顔を合わせるのが気が引けたが、光属性を習得したと言われて次はどんな修行になるのか想像ができなかった。
「第二属性の習得ね。jewelsは属性を2つ以上習得しなきゃいけないから。クォーツはほとんどの属性を習得できてるから引き続き師匠をしてもらった方が良いわね。」
「…はい。」
勇太は返事した途端、研究室に戻っていた。
「あの子、何だか危なっかしくて。少しでも気持ちが晴れてくれていれば良いのですけど。」
『扉の空間』で残っているパールが晴明に言った。
「だから、清太はそなたに今日は主を託したのであろう。多少は『正の感情』を取り戻したようだの。」
晴明が言った。
「昔の清太と被るんです。気持ちがまっすぐで、危なっかしいところが。」
パールがふふっと笑った。
その日の昼休憩に、ご飯を食べながら各々の修行の状態を報告した。
「僕、一応無属性を一通りマスターしたって。モリオンの魔術道具の開発の手伝いをしているんだ。」
貴司が言った。モリオンの手伝いをしながら地属性の修行をしているとのことだった。
「私は第二属性は無属性を選んだの。補助系をもっと使えるようになろうと思って。」
樹理奈が言った。師匠はエメラルドが引き続き担当していた。
「ルビーから火属性を教えてもらってる。アクアは人間界で仕事しながら教えてくれてたみたいだったんだ。」
海斗が言った。アクアが何の仕事をしているかは教えてくれなかったそうだ。
「俺は、まだ第二属性はしてないんだ。選べるものなの?」
勇太が聞いた。
「そうみたい。第一属性より魔力の属性の優位度は低いから威力は落ちるけど、術の幅が広がるって。」
樹理奈が言った。
「野上さんはどうしてるの?」
勇太は緊張しながらあきに聞いた。
昨日以来、明らかにあきを意識しているのを勇太は自分自身ではっきりと感じていた。
『晴明とペリドットが変なこと言うから変に意識してしまってるじゃないか…』
そう思いながらもあきを見た。
「Jewelsになるって。でも、今は保留中。」
あきと目が合い、勇太はドキッとした。
「そうなんだ。」
「モリオンから聞いたんだけど、jewelsって名前と同じ宝石をもっているんだってね。」
貴司が宝石核の話をした。あきは知っている様子だったが、海斗と樹理奈は初耳のようだった。