翌日
次の日、勇太はいつも通り大学に登校した。
1限目の講義15分前に席に座ってぼーっとしていたら海斗もやって来た。
「おはよう。」
「おはよう、昨日は眠れたか?」
海斗は眠そうな顔で聞いた。
「…あんまり。」
勇太も海斗も昨日の出来事のせいで頭の中がゴチャゴチャで夜なかなか眠れなかった。
「だよな。」
海斗は少し安心した顔になった。
少し離れた所で樹理奈が他の女子たちと話しているのが聞こえた。
「樹理奈、金剛教授かっこよかった?」
「かっこよかったわ!助手の先生も美人だったわ!親子なんだって!」
「えぇ!何歳なんだろ?」
「助手の方は20後半から30前半かしら?」
「金剛教授って先月までアメリカで研究していたらしいけど、樹理奈聞いた?」
そんな会話が聞こえている中、海斗が、
「そういえば今日いつするんだろうな。」
とボソッと呟いた。
昨日、『また明日』と言われたが、今日のいつかとは言っていなかった。勇太はキョロキョロと講義室を見回した。あきはまだ来ていない。
「まだ来てない…」
貴司は仲の良い友人たちと講義室に入ってきた。
勇太は眠かったので講義が始まるまで机の上で顔を伏せて仮眠をとることにした。
あきは講義が始まる5分前に入ってきた。
勇太と海斗は寝ていたので気づかなかった。
1限目の始まりのチャイムが鳴り、2人とも目を覚まして講義を受けた。
90分の授業が終わった直後、勇太の目の前が急に真っ白になった。
周りは講義室ではなくただ何もない真っ白な空間に勇太、海斗、貴司、樹理奈、あきの5人が立っていた。
驚いたが昨日、『扉が開いた』時と同じ景色だった。
『いよいよ…始まるのか…』
勇太は妙な緊張感を覚えていると、
「あら、おはよう。」
と後ろから声をかけられた。
「私はルビー、こっちはサファイア。今日から魔術修行してもらうけどいいかしら?」
「納得できてないんだけど。」
海斗がルビーに詰め寄った。
「なんで俺たちなんだよ。お前たちの戦いに何で巻き込まれなきゃいけない。勝手にやってろよ!」
ルビーはため息をついて、
「敵は石ころたちの心の闇が深ければ強くなってしまうからこうやって協力してもらうんだけどね。つまり、今までのあなたたちは敵に力を与えてくれていたお陰でこっちは大変なのよ。今は敵は大人しい方だけど。」
サファイアも口を開いた。
「60年ほど前に戦争があっただろ。あれはヤツらの暗躍によるものだ。戦争が終わってしばらく出てこなかったが、最近また勢いづいてきた。今度はあれ以上の戦争か何かを仕掛けてくるかもしれないな。」
「じゃあこんな少人数じゃなくてもっと大人数で修行した方がいいんじゃ…?戦力は多い方がいいと思うけど?」
勇太が言った。海斗も樹理奈も貴司も納得した顔をした。
「あまり多くの人間に魔術を教えると私利私欲で使う人間が出てきかねないのよね。」
ルビーはチラッとあきを見て言った。あきも頷いた。
「だからこちらで選別して修行してもらっているの。まぁ、選んでいるのは私ではないけど。」
昨日アメジストもダイヤが決めていると言っていた。
「観念してくれるかしら?」
ルビーがみなを見回した。
「私、やってみるわ。」
樹理奈が言った。なんとなくやらなきゃいけない雰囲気が漂っていた。
「じゃあ、今日から魔術見習いね。あき、手伝ってね。」
ルビーはニッコリ笑った。