プロローグ
『扉を開ける』
真っ白な空間に突然装束を着た男女が12人現れた。
各々、白衣に色とりどりの袴を履いている。
「5年ぶりくらいか。何か聞いているか。」
青い袴を履いた男が紅色の袴を履いた女に聞いた。
「知るわけないでしょ、サファイア。私よりもクォーツの方がダイヤから色々聞いているんじゃない?」
皆、クォーツと呼ばれた灰色の袴を履いた男の方を見た。
「聞こえた通りだ。今から扉を開けるから…」
クォーツが言いかけると紫色の袴を履いた女が声を荒げて、
「なんであんたがここにいるの!?あんたはメンバーじゃないでしょ!?」
と詰め寄ろうとした。
「師匠の代わりだ。ちなみにガーネットの代わりにロードに来てもらった。」
ロードと呼ばれた灰色の袴を履いた女が首を少し傾けにこりと笑った。
紫色の袴を履いた女はまだ納得がいかない顔をしているが、白い袴を履いた女に肩をぽんと叩かれた。
「喧嘩なら後でしなさい、アメジスト。」
「分かったわよ、パール。」
そう言ってその場を下がった。
その様子を少し離れた所で見ていた黄色の袴を履いた女が黄緑色の袴を履いた男に聞いた。
「そういえばまだガーネット見つかってないのよね。オニキスの方はどうだったの?」
「オパールとも確認しに行ったが、オニキスはやっぱりだめだったようだ。かなり痛手だな。」
オパールと呼ばれたクリーム色の袴を履いた男とが軽くうなずいて言った。
「だから扉を開けるんだろな、トパーズ。5年前の収穫といえばあきぐらいか。って言うかペリドットは儀式用の装束似合わねえな。」
ペリドットと呼ばれた黄緑色の袴を履いた男が少しムッとした顔をした。
さらに離れた場所で濃い水色の袴を履いた男と薄い水色の袴を履いた女が話をしている。
「アメジストが納得いかないの分かるわ~。このままじゃ『twelves』の意味ないじゃん。」
「いないものは仕方ないでしょ、ターコイズ。
ダイヤが扉を開けるって呼び掛けて来たんだから穴埋めしてもらわなきゃいけないじゃない。」
「でもさ、アクア。そのダイヤ本人いないんだぜ。なぁ、エメラルド。」
エメラルドと呼ばれた緑色の袴を履いた女はため息をつきながら、
「今回はダイヤは“向こう側”の用事なのよ。フラーレンも多分一緒で。クォーツを代わりにしなきゃいけないくらい大事な用事と思っときなさいよ。」
先ほどの紅色の袴を履いた女が近寄って来て言った。
「文句があるのは分かるけどダイヤの合図があるまで持ち場について。」
「分かったよ、ルビー。」
12人が円状に向かい合って並ぶと、足元に幾何学模様が描かれた円陣が浮かび上がった。
クォーツが言った。
「ロードクロサイト、アメジスト、アクアマリン、クォーツ、エメラルド、パール、ルビー、ペリドット、サファイア、オパール、トパーズ、ターコイズこの12人で扉を開けろと師匠からの命令だ。合図があったら発動させろ。」
「ロード、あんたはこの術式知ってたの?」
「ええ、さっきクォーツから教わったわ。」
「アメジスト、文句は後で聞いてやるよ。」
「あんた暑苦しいから嫌よ、ペリドット。」
「アメジスト、少しは黙ってろ。」
クォーツがアメジストをキッと睨んだ。
静寂が真っ白い空間に漂った。