テスト勉強2
「後輩から教わってしまうくらい苦手ってことですね、わかりました」
「こ、これは冗談抜きでショックだった……」
俺、本気でまずいんじゃないか?
「まあ昔から英語の教室通ってるんで大学受験レベルの英語くらいは普通に解けるんですけどね」
な、なるほど。俺が酷すぎるんじゃなくて沙耶がすごいのか。
「そうなんだ。よかっ」
「でも、それ抜きにしても先輩の英語は酷すぎですけどね」
俺の希望を一撃で粉砕しながら俺の手元のテキストを覗き込む沙耶。
もう精神的にぼろぼろなんですが。
「そんなので、いつもはどうしてるんですか?」
「いつもは幼なじみがテストに出る範囲を、赤点だけは回避できるように教えてくれるんだけど、今回は『いつも答えの選び方とか教えてるけど、内容を自分で考えて理解しないと意味ないってわかってる? とりあえず今回は私は助けないから』って言われて……」
「じゃあ私も助けませんね。ていうかそんな状況でよくもそんなに悠々と部室でのんびりできていましたね」
俺の精神に九十のダメージ!
「お願い、沙耶! 英語を教えてください!」
「恥も外聞もあったものじゃないですね……」
頭くらいいくらでも下げるさ、だって……。
「中間テストがぎりぎりだったから今回悪かったら夏休みが特別補修で全部つぶれるって英語教師に脅されてるんだよ! 今思い出した! 本当にお願いしますっ!」
「……はあ。そんなことよく忘れられますね。それで、どこから分からないんですか?」
呆れ顔でため息をつきながらもそう言ってくれた沙耶。
「教えてくれるの?」
「教えますよ」
沙耶大好き!
「とりあえずその不穏な空気消してくださいね」
不穏って言われた……。
「仕方ないですしね。夏休みの予定も先輩に言われた日は空けてますから、先輩が補習に行っちゃったら暇になりますし」
「ありがとう沙耶!」
「その代わり、夏休みは毎日英語の勉強してくださいね」
え? あれ、おかしいな。今なんだか変な言葉が聞こえた気がするぞ。
「沙耶、今なんて?」
「だから、夏休みは毎日英語の勉強してください」
な、なんだって……。
「この先もそんなのじゃ駄目でしょう。最低限度は英語ができるようになってもらいます」
「そ、それって補習とあんまり変わらないんじゃ……」
補習よりはマシかもしれないけどさ。
「してもらいます。わかりました?」
「うう……わかりました」
「はい。まあ私も教えますから」
がんばります、はい。
「じゃあとりあえず目の前のテストからどうにかしましょうか。テキスト見せてください。今回の範囲はどこですか?」
「んー終わったー。沙耶、ありがと! これでテストは大丈夫な気がする!」
「全然駄目に決まってるじゃないですか。明日もやりますから部室来てくださいね」
「はい……」