十一話 『生徒会』
俺がアルバノス魔法学園に転入した翌日にはすでに俺が優勝宣言をしたこと、
二学年最強と名高い三人が俺とチームを組んだという話が出回っていた。
その話を聞いた生徒たちの反応は『何言ってんだ馬鹿じゃないのか?』
『優勝なんてできるわけねぇだろ』『こういう分をわきまえないやつってほんとうざいよね』
といったものが大半を占めた。
俺のクラスの連中は昨日すでにさんざん馬鹿にしていたので満足したのかそれほど
何かしてくるということはなかったのだが、ほかのクラスの連中や他学年(主に三年生)
にはすれ違う耽美に「ば~か」とか「消えろ」とか言われた。
その度にエリルが「ユウナギ様!ここは一発かましてりましょう!」などと言ってくるのだが
その度に首を振った。
俺もそう気が長いほうじゃないから大概頭にきているが今ここで力をみせては模擬戦での
インパクトが薄くなってしまう。
強烈なインパクトを与えるためにはタイミングが大事なんだよな。
ま、正直エリルが隣にいなかったら今頃三人はぶっ殺していただろうが。
生徒会室には五人の生徒が各々の役職の席についていた。
「噂はきいていますか?」
一番奥の席に座る生徒、生徒会長・ユーナ・ラン・クリスタルが口を開く
「転入生の話だろー?ったく、騒ぎすぎっしょ、まじで」
軽めの口調で話すのは生徒会会計・シーサー・イル・ドットウィーク。
「フン。」
会話に興味があるのかないのかわからない反応をしたのは
生徒会補佐・ジョージ・ゴ・ラッドン
「転入生はともかくとして、あのチームには二学年最強と言われている三人が
入っているようですわね。油断は禁物ですわ」
お嬢様口調で話すのは生徒会副会長・ニナ・ル・グローラ
「ってことはあの女もいるわけか。今年は絶対に負けない。」
早速敵意をむき出しにしているのは生徒会書記・カヤ・オル・フラート。
「転校生についての情報は?」
「聞いた話じゃぁ測定不能ランクが出たって話だぜぇ。つぅことは魔法は使えねぇってこと
っしょ?俺らの相手じゃねぇよ」
「フン」
「そんな弱っちい奴がリピローグの娘と絡むとは思えないんだよね、うちは」
「同感ですわ。考えられることとすれば魔法は使えずとも武芸によほど秀でている、というところでしょうか」
「どんだけ武芸に秀でてようが関係ないっしょ。どれだけ強くても魔法を使える魔術師には
勝てない。もう結論出てる話でしょうがー」
「あなたのそういう敵をしたに見て油断する性格は直したほうがいいと思いますわ。
いつか足元をすくわれますよ」
「へいへい。」
シーサーは特に懲りた様子もなくいつもどおり軽い口調で返した。
「その転入生は何番手ですか?」
「さぁ~。でもまぁ、優勝宣言までしてるくらいだから大将ででてくんじゃねぇかー??」
「その可能性が一番高いと思いますわ。おそらく名の通った三人を先鋒、次鋒、中堅と
持ってきて速攻で方をつけていくつもりでしょう。」
「フン」
「んじゃ、うちらの順番はどうする?正直うちらと一番いい勝負しそうなチームってそいつらな
わけだしさ。」
「大将は私が務めるわ」
ユーナが高らかに言う。
「そうですわね、大将はユーナさんが適任ですわ。では私は副大将で」
「おいおい!俺が副大将を務めてやるよ。ばっちり責任果たしてやっからよ」
「あんたはただ楽したいだけでしょ。オッケー、副大将はニナね。
んじゃ、うちとシーサーとジョージでストレート勝ちしまくるわ」
「何がオッケーだよ、ったく。まじめんどくさいっしょ。」
「フン」
まぁ、正直な話シーサーが副大将を勤めても問題はない。
ニナとシーサーの使う魔法の相性はニナが優位に立つ。
もちろん魔法の相性の優劣が決定的な実力差につながるわけではないが、
それでも副会長という役職的にもニナが副大将を務めたほうがいい。
それに噂のチームの中には水魔法の使い手であるリピローグがいる。
ニナとエリルが当たれば勝負はジリ貧になるだろう。
しかしシーサーは土魔法の使い手。エリルに当たれば相性的には
非常に有利になるのだ。
そういった点を踏まえて見てもやはり副大将はニナが一番適任だ。
っま、うちはうちと同じ火魔法の使い手であるナナを倒せれば問題ないんだけど。
「本番前には彼がどのような方法で戦うのか知っておきたいですね。」
「やけに彼のことを気にしますわね。」
「相手が騎士団トップクラスの相手というように敵の強さが分かっていれば
自分より格上の相手でもそれなりの戦い方ができます。しかし得体のしれない敵
ほど恐ろしいものはありません」
「んまぁ、本番までにできるだけ情報は集めるつもりだけど俺の予想だが
多分あいつ、本番まで力を出すつもりないっしょ。もし力をひけらかしたい
だけならとっくにやってるだろうからよ。」
シーサーの意見に皆が頷く。
「まぁそう心配しなさんなって。正直あいつらもツエーが俺らも去年より更に強く
なってんだからよ。全勝負三勝ストレート勝ちっしょ。」
「そう上手くいくとは思わんがな。」
ここにきてジョージが初めてまともに会話に入ってきた。
「気を引き締めろ。手を抜けば足元をすくわれる」
「そうですわね。本番まであと三日。最高のコンディションで臨めるように
体調管理を怠らないようにしてくださいな」
ニナの言葉を最後に生徒会会議は解散となった。
模擬戦まであと三日。




