妻と夫のハロウィンパーティー ②
型をとって、切って、縫って、縫って縫って縫いまくります!!
というか、忘れてました。友人はとってもおしゃれさんであるばかりでなく、非常に細かい点まで手を抜かない、真面目な性格です。でも遊び心もあって、多趣味。
その几帳面さと遊び心をふんだんに取り入れた衣装の数々は、縫っているだけでも楽しくなってくるものばかりなのですが、どうしてもひとつひとつの意匠が細かくて時間がかかってしまうんです。
パーティ前に一度は試着してみてもらいたいですし、あまり時間がありません。
縫って縫って縫いまくるべしっ!
ところで、一体友人はどうやってサイズを測ったのでしょうか。
私用の型紙を見たとき、そのサイズが少しもずれていなくて、ちょっと寒気が走りました。
私、友人に測らせたことないんですが。
どうやってこんなに正確なサイズをたたき出しているんでしょうか。・・・いえ、ここは追求するのはやめておきましょう。何だかその方が自分のためな気がします。うん、そうしましょう。
店主さまの衣装を作るとき、子猫さまの4倍近い布を使いました。子猫さまは私よりも小さな方で、店主さまは夫よりも大きな方ですものね。
ああっ、でもこの衣装をきた二人が並んで立ったら、きっとすごく素敵です!!
見たい、非常に見たいです!
想像しただけで身悶えしてしまって、思わず店主さまの衣装に顔を埋めようとしたら、後ろから、襟首を引っ張られ増した。うぐぉ、と可愛らしさの欠片もない悲鳴を上げてしまいました。うう、喉が痛いです。
恨めしい気持ちで襟を掴んでいる夫を見上げると、ぱっと手を離して何事もなかったように本に視線を戻しました。
む、いきなり人の襟を掴んでおいて、説明ひとつなく、何事もなかった事にする気ですね!?
「旦那さま、襟を掴まれたら苦しいです」
コクリ、と頷く夫。
・・・えーと。それは分かっているって事ですよね。分かっててやってるんじゃ、なおさら悪いです!
叱ろうと息を吸い込むと、夫が私の手から縫いかけの衣装と針を丁寧に取り上げました。
なにするんですか、まだ途中なのに!
夫が遠くに置いた布を引っ張り上げようと手を伸ばして居るうちに、夫が私を抱えて立ち上がってしまいました。
もうっ、時間がないのにっ!
そのまま寝室に向おうとするので、夫の腕から落とされる覚悟で思いっきり暴れたのですが、やっぱり、ビクともしません。
っていうか、やっぱりおかしいですよね、ひと一人抱えてこんなに揺るぎないってどういう事ですか。私だって結構力持ちなんですよ、夫のせいで非力に見えますけど、そんなことありません。断固主張しますっ!!
ジタバタ暴れていると寝床に降ろされ、寝具がかけられました。あぁ、やっと眠れる・・・ってそうじゃないでしょう、私!
・・・あれ、いつかもこんなことが有ったような? とにかく、もう時間が無いんですからもう少し進めておかないと。
起き上がろうとすると、夫が上からのしかかって来ました。
潰れます、内臓が口から飛び出しますっ!
バシバシ夫を叩いて苦しいことをアピールすると、少し身体を持ち上げてくれました。
私いつか本当に夫に押しつぶされてしまうんじゃないでしょうか。
「もう、寝ろ」
永眠させる気ですか!?
「まだ途中なんです、もう少し」
むずがるように夫の下から這い出ようとして、ふと、気づきました。
私、もしかして、眠いんでしょうか。だから感情の起伏が激しくなっているんでしょうか。
器用に体重を分散させてくれているので、夫の硬くて重い身体もなんだか、あったかいお布団のような・・・。こういうの、なんていうんでしたっけ。あったかいなぁ。
「あ、鳥の抱卵?」
お腹の下で、ほこほこにあったかくて。
親鳥さんは何も言わずに布団からはみ出ていた私の腕をしまってくれました。
うん、衣装作りはまた明日。今日はもう、眠気に逆らわずに寝てしまいましょう。
・・・お休みなさい。