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2 こんな夫です。


 私の夫は、見事なまでに無い無い尽くしな方です。


 夫となる方として初めて紹介を受けてお会いした時は、クマさんだ、と思いました。


 子供の頃に我が家にいた、私の身長よりも大きくて、私を含めた兄弟たちにソファの様に扱われていた焦げ茶色のクマさんのぬいぐるみにそっくりだったんです。背が高くて、がっしりしていて、焦げ茶色の髪とひげ、瞳も良く似ていました。


 残念ながら、我が家のクマさんの方が表情と愛嬌がありましたが。

 とっても優しい顔をしていたんですよ、ぬいぐるみのクマさんは。


 夫になるかもしれない相手は、それはそれは無表情に、無愛想に私を見下ろしていました。現在では、そこからさらに、無口、無骨、無精、無感動、無視とさらなる「無」が増殖して行くわけですが、当時はまだそれを知りませんでしたから、たったそれだけの「無」でも少し悲しかった気がします。


 大好きなクマさんにそっくりな方から嫌われてしまったと思ったんです。

 

 夫になるかもしれなかったその方は、激しく存在感を主張する筋骨逞しい大柄の体を持ちながら、気配を余り感じさせない身のこなしを持つ人でした。

 何か運動をしているのかもしれません。自然にこんな筋肉がつくとは思えないですし。足音だってたてません。

 ただ自分の格好に無頓着なのか、その辺のものを適当にまとっただけ、という感じの味気ない服装でした。

 私のほうは、保護者の方にわざわざこの日のためにと服を新調していただいていましたので一人だけ気合が入った余所行きで、いたたまれません・・・。


 夫になる人として紹介されたのは何かの間違いだったらしいその方は、私のことも全く興味が無いようで、無関心なのを隠そうともせずに早くこの場が終わればいいのに、と時間の経過だけを待っているような様子でした。


 私としても、この方と夫婦になるのは想像できないなぁ、と緊張も何もまるっとなくなってしまって、ついボンヤリしてしまっていたようです。


 保護者の方に促されてようやく意識が戻って来ました。

 腰を上げた保護者について行こうとしたところ、とてもいい笑顔で止められました。


「今日から君は彼の家で暮らしなさい」


 爆弾発言でした。


 私だけでなくモロに被爆してしまった、今日から一緒に暮らす事になった相手は、眼を少しまるくしていただけで、反論も主張もなく、私を連れ帰ったのでした。


 あれよあれよと整えられて、数日後には正式な夫婦になりました。書類上、ですが。


 え、夜の営みですか?

 初夜はもちろん、その後も一度もありません。何故か寝所は一緒なんですけどね。ほんと、なんなんでしょう。

 

 とにかく、こうして私は無い無い尽くしな夫を持ったのですが、それは結婚してからも変わらず、最近に至っては、夫から話しかけられるどころか、声を掛けられることさえなくなってしまっています。


 ・・・本当にどんだけ無い無い尽くしなんですか。

 



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