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10 夫を躾直します。計画を練らせましょう。


「お出かけしましょう」


 明日と明後日は夫がお休みです。

 昨日確認したら、特に予定がないそうで、こっそり心の中で喝采を上げました。ちょうど、先日友人に頼んでおいたもの、各地で行われている集会の招待状が届いています。

 夕食後、私はそれらの招待状を目を瞬かせている夫の前に差し出しました。


 そう、今回は、『夫に外出の予定をたててもらおう! 計画』です!


 本当は私が外出先を決めて、夫について来て貰う方が簡単だと思います。最近の夫の様子なら、たぶん不機嫌そうにしながらもついて来てくれるだろうな、とは思うんです。


 でも、今回はあえてさらに難易度をあげてみました!


 リーフェリア祭が近づくこの季節、普段以上に各地で集会や小さなお祭り、劇などの文化的な催しものなどが開催されるので、予定を立てるには丁度いい時期なんだそうです。


 なので今回は、未来の奥さまとのお出かけ先を、夫がいつでも思いつけるように練習してもらう計画です。


 正直言うと、私もこういった計画を立てることは苦手なのですが、友人いわく、いかに伴侶との外出を演出し、楽しませるかが男性側の腕の見せ所なのだとか。

 さすが、完璧なる男性像として世の女性たちの人気を博している友人だけあります。私はすっかり乗り気になりました。


 ぜひ、夫にも完璧なる男性像を身に着けてもらい、未来の奥さまに喜んでいただきましょう!


 期待を込めて夫を見ていると、その視線が招待状の束と私の間を何度か行き来したあと、ふと逸らされました。これは、無視してなかったことにする方向ですね!? そうはさせません!


「旦那さまはお休みのとき、どんなところにお出かけされているんですか? 私も一緒に行ってみたいんです」


 これも友人の受け売りなのですが、いきなりお出かけ先を考えさせようとしても、思いつかないだろう、と。

 それなら、ある程度、行きたいところ、やりたいことなどの情報を与えて、その中から選択させたほうが、考えやすくなって良いのだそうです。


 とはいえ、私もあまり外出に慣れていないので、なにがあるのかほとんど知りません。夫は時々休日に出かけているので、夫が良く行く場所などを見てみたいな、という軽い気持ちで言ってみたのですが、意外にも夫は激しく動揺しました。

 無表情のまま、手に持っていたお酒の入った杯を取り落とし、大きく首を振っています。


 え、何ですか、その反応?

 もしかして。


「・・・一緒に行けないようなところに行っているんですか?」


 思わず半眼になってしまったのは仕方ないと思います。

 ええ、私はあれよあれよと気が付けば式も無く書類上結婚していたので、実際のところは形ばかりの妻ですし? 健全な男性であろう夫が、口に出して言うにははばかられるような場所に行っていたとしても、私がとやかく言う筋合いじゃないとは思いますよ?


 でも、こういうあからさまな反応ってどうなんですか?


 私の声の低さに、なにを考えているのか察したらしい夫が、濡れ衣だ! とばかりに焦った表情を浮かべてさらに激しく首を振っています。


 どうしてでしょう。

 とっても必死で、その分だけ白々しく見えます。


「いえ、やっぱりいいです。何かおいしいものが食べられるお店と、この中のどれか集会に連れて行ってもらえませんか?」


 ええ、男性にとって女性を伴って出かけるには差しさわりがあるようなお店はいろいろとありますものね。でもそんなところに連れて行かれても、正直私にとっては居心地が悪いこと間違いなしです。先ほど言ったことは早々に撤回して、代わりに別の提案をすると、夫は額に手を突いて、がっくりと項垂れました。


「・・・誤解だ」


 搾り出すような低い声に背筋が伸びますが、私はふい、と視線を逸らしました。なんだか、気分がちょっと悪いです。やっぱり、物置部屋を片付けておいたほうがいいかも、と物置部屋に視線を向けると、夫が大きな音を立てて杯を置きました。弾みで夫の方を見ると、手の隙間から、夫が睨んでいます。


「わかった、明日、一緒に連れて行く。うまい店と、集会。それでいいか」

「・・・は、はい」


 その視線がとても厳しく、いつに無く長く話した夫に驚きながらも、お出かけの予定が決まったようです。正直、ものすごく気が進まなくなっていたのですが、夫の迫力に押されて頷いていました。


 とりあえず、計画は成功、なのでしょうか?


 ・・・後日、友人にこの日のことを話したら、爆笑されました。




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