妄想症
「え・・・・・核って・・・・・」
「ふむ。ワシはリトルボーイしか知らんぞ。」
これは、なんなのだ。
次々と、爆発が起こっている。
人の血肉は恐らく、一瞬にして消え去るのだろう。
「せ、医者・・・・・これは、どんな、どういうことなんでしょう・・・・?」
「被害妄想の一種だね。良く言えば常に周りに気を配って、緊急事態にすぐ対応できる軍隊を配備しておいたんだろう。悪く言えば、奴さん、少々頭が弱いのかね。全く、一体日本からどんな『攻撃を受けている』んだが。どこの国かは知らんが、遅かれ早かれ私たちは軍医に呼ばれるかもしれん」
それかその前に死ぬか。そんな事を言った医者の表情は笑っているが、その目には少なからず怒りも混じっていた。
「だめだね。もうじき札幌に大きなクレーターが出来あがるに違いない。」
「・・・・・と、止める事は?」
「出来るわけが無い。まずこの核のことを調べ、それから国を特定しないと。だが、その作業を終える前に皆全滅だ。」
「・・・・・まさか。」
国から、国へと。
「・・・・・それとも、」
影響を受けることがあれば。
「核を撃ってきているのは、一国だけではない・・・・・?」
それは、その国の悪夢として国に表れるに違いない。
「それかもしれない。」
「・・・・・・なんでそんなに冷静なんです、医者。」
「別に。私だって焦ってるさ。」
「そんな風に見えません。」
なら、と医者。
「いきなり奇声を上げてみせようか?それともメスを持って君の両腕を切り落とそうか?いや、両足?君の望むほうを言いたまえ」
「な、なんですかいきなり」
「だから、私だって焦っているんだよ。君が『冷静を解け』と言ってるんだから、なんならサイコパスなってあげようというだけさ」
「私は別に・・・・・」
「なら、黙っておれ。不快極まりない」
静かな一括と、少々気押される私。
ズズ、とコーヒーを啜る程度のほんの小さな音でもなければ、私はそこに固まっていたであろう。
「・・・・・すみません」
「・・・・・しょうがないことさ。死を受け入れるには時間がかかるからねぇ」
「死んだ事があるんですか?」
「今知った」
少し微笑むようなその言葉は、私の雁字搦めになった思考回路をいとも簡単に解いた。
「・・・・・ありがとうございます」
「なにをいまさら」
「・・・・・外へ出ても、良いでしょうか」
「あまりオススメはしないがね。」
そう言いながらも、あっさりと私に鍵を渡す医者。
「・・・・・頑張ってちょ」