少女と鵺②
「でもねぇ、そうゆっくりも言ってられないんだ。」
医者は静かに言った。
「恐らく、この日本にもそのウイルスは来てるだろうし、それにウイルスじゃないのかもしれない」
私が始めて聞く、この人の重々しい声。
「これが人間がたどり着く最終地点なのかもしれん。猿から進化し、周りは森からビルに変わった。これは人間の持つ知能が上がった、生きる環境が変わったということでもあるが、今まさしくこれが起こった。外国に比べその症状が出ていないのは日本が昔に鎖国をして外国との接触を避けたから・・・・・・?いや、もしもこれがさっき述べたように最後の人間の進化だったら関係ないことか。」
まるで独り言のように言う、医者。
やはりこの人は只ならぬ人物なのかもしれない。
「しかし、まだ日本国民にはその症状が現れていないのですし、それに日本にそのウイルスがこないかもしれないじゃないですか」
私が言うと、医者は静かにこちらを向いた。
「さっきワシが言ったことを覚えておらんのか。」
「ええと・・・・・さっきですか?」
私は考えた。
「国・・・・?」
「その通り。アメリカ、中国、ブラジルはもうその症状が出ておる。アメリカが感染源だとすれば、もう中国まで行っている。アメリカと中国の間に位置する日本なんぞあっという間じゃろうに。また中国が感染源だとすれば、もうアメリカとブラジルに症状が出ているんじゃから、その間の日本はもう遅い。」
「・・・・・なるほど」
どっちにしろ、もう遅いのか・・・・・?
「では、簡単な実験をしよう」
医者が言った。
「なんでしょう。」
「ワシは空を飛べる。お主も、そして世界中の人間も」
いきなり何を言い出すのだ、この人は。
「ほれ、ワシは今空を飛んでいるぞ」
「・・・・・・え」
その瞬間。
医者がフワフワと中に舞っている姿が、私の目に映った。
「・・・・・凄いですね、医者。まさか本当に空を飛べ・・・・・」
・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
これは。
「はい、一名だーつらーく」
恐らく絶望の表情を浮かべているであろう私の表情を見てか、医者がケラケラと笑った。




