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異世界恋愛+α

【コミカライズ発売記念SS】その後のベイジル8歳

掲載日:2026/08/20

※独立した短編ではありません。

「婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?」https://ncode.syosetu.com/n2678jq/ に付随した後日談です。



 すべてが唐突だった。


 未来の僕が《王家の禁術》を使ったらしく、ある朝目覚めたら、八歳の僕は十年後の世界──。

 "十八歳の僕"の身体の中にいた。


 周りにいる侍従たちも知らぬ者ばかりで、突然の出来事に混乱し、騒ぎに騒いで呼んで貰ったのが、幼馴染のセシィこと、セシリア・リッテル公爵令嬢。


 十八歳になった僕の婚約者は、女神のように美しかった。


 急にお姉さんになったセシィに戸惑いつつも、仕草も表情も僕の知るセシィのままで安心し、僕は十年後の未来を楽しむことにした。


 青年になった僕は、セシィよりうんと背が伸びていて。

 声も低くなってて、その声でセシィを呼ぶと、彼女が頬を赤く染めて動揺するのが、とてつもなく可愛い。

 慣れ親しんだ王子宮ではなく、王宮で政務に携わってて、これはもういつでもセシィと結婚出来そうな気がする。


 ただ気がかりは、セシィの元気がないこと。

 隠すように振舞ってるけど、いつも彼女を見ていた僕にはわかってしまうわけで。


 彼女との散歩中、悩みを聞き出そうとしていたら、無礼な女がいきなり湧いて出た。


 見たこともない令嬢が、一方的にきゃんきゃん叫ぶ。


 貴族とは思えないほど下品な女が暴露したのは、そいつがセシィを呪っているという事実。

 さらに相手がセシィ目掛けて特大の呪いを発動させようとした──ところで、僕は"子どもの僕"に戻っていた。


(うわぁぁぁ、なんで? どうしてあんな場面で? 僕はあの後ちゃんと、セシィを守り切れたのか!?)


 気が気じゃなく動転していた僕は、「勝手に王子宮を抜け出した」という身に覚えのない説教が耳に入るはずもなく。

 こんこんと叱られる理不尽さに唇を噛みしめつつも、ただセシィの安否だけを案じ続けた。


 長い説教から解放されて自室に戻ると、置き手紙が目に入る。


 禁術の発動者、"十八歳の僕"から、僕に()てた手紙だった。


「未来の話だから、詳しく語ることは出来ないが」との前置き通り、情報不足が過ぎて、すっごく消化不良な内容だったけれど。


 要約すると、"十八の僕"はセシィの呪いを解くため過去に戻り、僕の身体を使って事件を解決したらしい。


 未来の僕がセシィを泣かせてた理由も、その呪いが原因だったとか。

 けど僕は未来でもセシィひと筋のようで(当然だ!)、"セシィのため"と言われれば、強引に身体を奪われた件も、なんとか許してやるしかない。相手、僕自身だし。


(……うん。振り回されて、いろいろと言いたいことはあるけど、ここは僕がオトナにならなきゃ) 


 手紙を読み終えた僕は、ふうっと深い息を吐き、侍女が用意してくれたお茶とお茶請けの菓子を口に運ぶ。


(ん? 手紙、二枚目があるな)


 ぱらり、と紙をめくると「追記」があった。


"なお、今回の礼として、話しても(さわ)りのないことを伝えておく"


(なんだ?)


"これは過去に体験した話だが。茶菓子のフロランタンには気を付けろ。グラついてた乳歯(・・・・・・・・)が抜けて、建国祭でセシリアと会う時、間抜け面を(さら)すことになるぞ"


「んっ?」

 思った時には遅かった。

 菓子を噛んだ僕は、口中に違和感を覚え、ついで抜けかけだった上の前歯(・・・・)がポロリと落ちる。

「……え……?」


 建国祭は明後日だ。

 僕の、前歯……? え……?

 

「情報が、(なん)の役にも立ってないっ! 次に会ったら許さないからな──!」


 僕は。未来の僕に向かって咆哮したのだった!!





 建国祭のセシィも眩しいくらいに可愛かった。

 前歯を隠すために、あまり喋れなかったけどね! ぐすん。



《ベイジル八歳、その後》完





 お読みいただき有難うございます!

 こちら、アルファポリス様で「婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?」と一緒に公開していたのですが、商業化に伴い、作品を引き下げました。

 このままお蔵入りも寂しいので、コミカライズ発売記念として投稿。


 単独で成り立たないお話で恐縮ですが、前作とあわせてお楽しみいただけましたら嬉しいです♪

 なお、子どもの歯は8歳頃に上の前歯が生え変わります(笑)

 どうぞよろしくお願い申し上げます!ヾ(*´∀`*)ノ

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― 新着の感想 ―
手遅れ情報っ! 前歯のない状態でデートかあ………………。 まあ8歳ならそれもまた思い出さ(≧▽≦) それでもいやならマスクや面をして怪しいデートで(*'▽'*)
アドバイス、全然役に立ってない(≧∇≦) ベイジルくん、早く前歯が生えるといいね(*´艸`) 今回も素敵なお話をありがとうございます(*˘︶˘人)
きゃわわわわ( ˘ω˘ )
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