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シャーロットの仮説  作者: ariya
代理の打ち合わせ

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6.

「それで、自殺じゃないなら他殺と考えるかい? それなら誰が怪しいか」


 ルイスは情報を整理してみる。


 死因は中毒死。胃内容物からアルカロイド、彼が飲んでいたコーヒーカップにもアルカロイド。


 自殺、と考えれば単純だが、原因が婚約解消。あまりに弱い気もする。

 女癖が悪い恥知らずがその程度で自殺をするのか。見苦しくあがく様が目に浮かぶ。


 他殺であるとすればどうだろうか。

 考えてみる。

 容疑者たちを。


 who done it?

 誰がやったか?


 エリオットの関係者は3人。

 オルガ・リーベル、ジョン・ストラトス、アイラ・ケリー。


 オルガ・リーベル 23歳。

 被害者エリオットの元婚約者。家は数々の事業を取り行うリーベル商会を持つリーベル男爵家である。

 被害届と婚約したのは4年前。本来3年前に結婚予定だったが、女癖の悪さや素行に親が難色を示した為今に至る。

 

 ジョン・ストラトス 32歳。

 オルガが雇った弁護士である。エリオットとは直接交流はなく会話をしたのは今回がはじめてだという。エリオットの素行から過去の裁判で関わった可能性がないか調査中である。


 アイラ・ケリー 18歳。

 エリオットの恋人。彼女と結婚したいと騒いでオルガとエリオットの婚約は破談となった。

 


 How done it?

 どのように殺したか?


 今の情報では足りない部分が多いが、コーヒーカップに毒物が入っていたから経路はそこだろう。

 エリオットが飲むのを見計らい、誰かが毒を仕込んだ。


 誰が、いつ、どうやって触れたか?


 一番可能性があるのは店員のマリーと頭がよぎった。

 コーヒーを準備をしたのは彼女だから、エリオットに渡る前にいくらでも毒を入れる機会はあった。


 次にオルガ、ジョン。

 エリオットと話している間に隙を見て入れられた。だが、単独犯は厳しい。片方が気づかれるおそれがある。

 共犯ならどうだろう。

 例えばジョンがエリオットに話しかけて書類に注意を向けさせて、その間にオルガが毒をいれる。

 逆も可能だ。


 アイラは、無理だろう。

 エリオットが退席した後に彼女が現れて、まもなくエリオットは倒れた。


 Why done it?

 なぜ殺したか?


 今の話を聞く限りではオルガが一番動機を持っている。


 長年ルース子爵から圧力をかけられたが、エリオットの素行と、ルース子爵家の事業への投資で何とか結婚は避けてきたようだ。


 エリオットが態度を改めて生真面目に働けば結婚を考えていたが、その素振りはなく真実の愛を見つけたと恋人のアイラを見せつけて完全に見放すこととなった。

 

「本当にいつも迷惑しかかけないのね」


 聴取中のオルガは疲れたように呟いた。

 長い間エリオットに振り回されていたのが窺える。

 

 婚約解消の違約金でごねられて困り果てていたようだ。

 3日前に会わない宣言をしていたが、オルガがいないとサインをしないとごねられてこうして再び喫茶店で会うことにした。


 もうすでに婚礼適応期を過ぎようとしていたというのにエリオットはその期間を無駄にしたばかりか、後後のことにも砂をかけた行為であり相当鬱憤が溜まっていただろう。


 警察も一番怪しいと睨んでいるのか何度も彼女に声をかけているように見えた。


「あまりに単純な気もする」


 ルイスは疑問を解消できずにいた。


 オルガは見たところしっかりした令嬢だ。

 わざわざ自分が疑われるような真似をするだろうか。



「ルイスさん。今の君の考えは推理小説に忠実な整理立てだ。悪くない」


 シャーロットはルイスの考えを誉めた。



「How done it?がいささか甘い。だが、それは知識があるかないかの違いだから君は気にしなくてもいい」


 そう言われると気になってしまう。


 シャーロットは試薬を取り出した。

 瓶に入った透明な液体だった。


「これはドラゲンドルフ試薬という海外で開発された試薬で微量のアルカロイド、アミン系にも反応してくれるためよく使用されている」

「へー。現物をみるのは初めてです」


 推理小説を書きたいと調べて、道具のイメージがつかめずに断念した覚えがある。


「もしかして濃度がわかったりします?」

「残念だが、そこまでの高性能な試薬はまだない。だが、おおまかな判断はできる」


 シャーロットは1人の警官に声をかけた。すでに顔見知りななか彼はすぐにテーブルをあけてくれた。


 そこにあるのは飲みかけのコーヒーカップだ。

 エリオットが飲んだコーヒーの残り。


 シャーロットはそのカップの横に先程の試薬の瓶をおいた。

 カチャと音が鳴り、瓶が開かれる。


 シャーロットはコーヒーをスプーンひと掬いして瓶の中に放り込んだ。


 瓶の中、透明の液に放り込まれたコーヒーは一瞬で濁った。濁ったというより赤褐色のもやっとしたものが吹き出たようにも見えた。


「反応が早い。沈殿の量も多い」


 シャーロットは呟いた。


 化学はそこまで得意ではないのですぐには理解できなかった。


「正確な濃度はわからないが、この量ならば高濃度。一口飲んだだけで致死量だ」


 シャーロットは、警官にそれを伝えて記録を頼んだ。


「つまり、もしエリオット・ルースが毒入りコーヒーを飲んでいたら呑気に喧嘩してトイレにゆったり逃げる余裕などない」


 その前に倒れていただろう。

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